

株式市場の歴史において、1987年10月19日のブラックマンデーは忘れられない日となっています。
この日、ダウ平均株価は22.6%も暴落し、世界中の市場に衝撃を与えました。
この出来事は、グローバル化が進む金融市場の脆弱性を露呈させ、投資家や規制当局に大きな教訓を残しました。

ブラックマンデーの衝撃は、株式市場における「曜日効果」という現象にも注目を集めるきっかけとなりました。
曜日効果とは、特定の曜日に株価の上昇や下落が統計的に有意に観測される現象を指します。
多くの研究が、月曜日の株価リターンが他の曜日と比べて低い傾向にあることを示しており、これは「月曜効果」として知られています。
この現象は、効率的市場仮説に挑戦する重要な市場アノマリーの一つとして認識されています。

というわけで、実際に日経平均の過去20年分のデータを用いて、本当に月曜日が下がりやすいのか、曜日別の騰落率を調べてみることにしました。
本記事では曜日別の騰落率や曜日効果の原因などを解説していきます。
ポイント
- 火曜日が一番上がりやすい
- 月曜日、金曜日の成績は悪め
- 水曜日も意外と悪い
- 曜日効果が絶対に当てはまるというわけではない
- 月曜日は下がりやすく、金曜日が上がりやすいという研究結果もある
ブラックマンデーの教訓
この章ではブラックマンデーの教訓を説明します。
1987年10月19日の出来事の詳細
1987年10月19日、ダウ平均株価は508ポイント(22.6%)急落し、過去最大の1日の下落率を記録しました。
この暴落は香港市場から始まり、ヨーロッパを経て米国市場に波及。
ニューヨーク証券取引所では、2,257銘柄のうち195銘柄で取引が一時停止または遅延するなど、混乱が広がりました。
市場崩壊の原因分析
ブラックマンデーの原因として、以下の要因が指摘されています。
- 過熱した株式市場:1982年から続いた強気相場による株価の過大評価
- プログラム取引:コンピューター化された取引システムによる自動売買の連鎖反応
- ポートフォリオ・インシュランス:機関投資家による先物を使ったヘッジ戦略の失敗
- 国際的な経済要因:為替レートの不安定さや貿易赤字への懸念
これらの要因が複合的に作用し、市場の急激な下落を引き起こしました。
その後の規制変更と市場への影響
ブラックマンデー後、以下のような規制変更と市場への影響がありました。
- サーキットブレーカーの導入:急激な株価下落時に取引を一時停止する仕組みが実装
- 取引システムの改善:注文処理能力の向上や情報伝達の迅速化
- リスク管理の強化:金融機関や投資家のリスク管理手法が見直された
- 国際協調の重要性認識:各国の金融当局間の連携が強化
これらの変更により、市場の安定性と透明性が向上し、投資家保護が強化されました。
しかし、市場の完全な予測や制御は依然として困難であり、投資家は常にリスクを意識する必要があります。
ブラックマンデーの教訓は、市場の予期せぬ動きに備えることの重要性と、過度の楽観や自動化への過信の危険性を示しています。
これらの教訓は、今日の投資戦略を考える上でも重要な指針となっています。

株式市場における曜日効果の実態
この章では株式市場における曜日効果の実態について説明します。
株式市場の曜日効果は、特定の曜日に株価が統計的に有意な上昇や下落を示す現象です。
この効果は市場の非効率性を示す指標として、投資家や研究者の間で注目されてきました。
特に顕著なのは「月曜効果」と「金曜効果」です。
分析方法
使用したデータの説明(2005年から2025年までの20年間)
「HYPER SBI 2」を用いて、2005年2月から現在までの株価、騰落率を算出。
月別騰落率の計算方法
騰落率の計算方法:
「前日の終値」と「当日の終値」を用いて算出。
例
騰落率 = {(当日の終値 ÷ 前日の終値)- 1} × 100
- 2004/12/30の終値:11,488.76
- 2005/1/31の終値:11,387.59
騰落率(%) = { ( 11,387.59 ÷ 11,1488.76) - 1 } × 100
= -0.9 %
各曜日の平均騰落率データ
ポイント
- 火曜日が一番上がりやすい
- 月曜日、金曜日の成績は悪め
- 水曜日も意外と悪い
過去20年、15年、5年の3パターンを算出してみました。
どのパターンも火曜日が一番成績が良いことがわかります。
ワーストに関しては過去20、15年は金曜日が悪いですが、過去5年では水曜日が悪いことがわかります。

月曜効果と金曜効果の詳細解説
月曜効果
月曜効果は、月曜日の株価リターンが他の曜日と比較して低い、あるいはマイナスになる傾向を指します。
- 特徴:多くの研究が、月曜日の平均リターンが他の平日よりも低いことを示している。
- 考えられる原因:
- 週末の情報蓄積によるネガティブな影響
- 投資家の週明けの悲観的な心理状態
- 機関投資家の週末後のポートフォリオ調整
- 影響:一部の投資家は月曜日の取引を避けたり、逆に買い機会として捉えたりするようになった
金曜効果
金曜効果は、金曜日の株価リターンが他の曜日よりも高くなる傾向を指します。
- 特徴:複数の市場研究で、金曜日の平均リターンが週内で最も高いことが報告されている。
- 考えられる原因:
・週末を前にした投資家の楽観的な心理状態
・空売りポジションの週末前解消(ショートカバー)
・機関投資家の週末前のポジション調整 - 影響:週末を跨ぐ取引戦略や、金曜日の取引量増加につながっている。
これらの曜日効果は、市場の効率性に疑問を投げかける一方で、その存在自体が投資家の行動を変化させ、効果を弱める可能性もあります。
近年の研究では、グローバル化や取引の自動化により、これらの効果が以前ほど顕著ではなくなっているという報告もあります。
実際に今回統計を取ってみましたが、この曜日効果はあまり当てはまらないことがわかりますね。

曜日効果の原因
この章では曜日効果の原因について説明します。
投資家心理と行動ファイナンス理論
投資家の心理状態は曜日によって変化する傾向があり、行動ファイナンスの理論によると、この心理的バイアスが株価に影響を与えると考えられています。
- 月曜日:週明けの悲観的な心理状態が売り圧力を高める傾向
- 金曜日:週末を前にした楽観的な心理が買い意欲を刺激
これらの心理的要因が、特定の曜日に株価が上昇または下落しやすい傾向を生み出している可能性があります。
企業の情報開示タイミング
企業の重要な情報開示は、特定の曜日や時間帯に集中する傾向があります。
- 平日の夕方:多くの企業が取引時間終了後に重要情報を開示
- 金曜日の夕方:週末の情報の蓄積を避けるため、重要な発表を控える企業も
こうした情報開示のパターンが、翌営業日の株価動向に影響を与え、曜日効果を生み出す一因となっている可能性があります。
機関投資家の取引パターン
機関投資家の取引行動も、曜日効果に大きな影響を与えています。
- 週末前:ポジションの調整や利益確定の売りが増加
- 週明け:新たな投資戦略の実行や前週の情報を反映した取引
これらの取引パターンが、特定の曜日に株価の上昇や下落を引き起こす要因となっています。
曜日効果は、これらの要因が複雑に絡み合って生じる現象です。
しかし、市場参加者がこの効果を認識し、それに基づいて行動するようになると、その効果自体が薄れていく可能性もあります。
投資家は、これらの要因を理解しつつも、過度に依存せず、総合的な投資判断を行うことが重要です。

曜日効果を活用した投資戦略
曜日効果の存在を認識することで、投資家は市場の動きをより深く理解し、効果的な投資戦略を立てることができます。
ただし、これらの効果は時間とともに変化する可能性があるため、柔軟な対応が求められます。
曜日別の売買タイミング戦略
曜日効果を考慮した売買タイミングの調整は、短期的な利益を追求する投資家にとって有用な戦略となり得ます。
- 月曜日:一般的に株価が下がりやすいため、買いの好機とされることがある。
- 金曜日:株価が上昇しやすい傾向があるため、利益確定の売りに適している可能性がある。
ただし、これらの傾向は絶対的なものではなく、他の市場要因と合わせて判断することが重要です。
リスク管理と分散投資の重要性
曜日効果を活用する際も、リスク管理と分散投資の原則は常に守るべきです。
- 複数の銘柄や資産クラスへの分散投資
- ストップロス注文の活用
- ポートフォリオの定期的な見直しと調整
これらの方法により、特定の曜日の市場変動による影響を緩和し、安定的なリターンを目指すことができます。
長期投資における曜日効果の位置づけ
長期投資家にとって、曜日効果は補助的な情報として捉えるべきです。
- 定期的な積立投資:曜日効果よりも、コストの平均化を重視
- 長期的な企業価値の評価:日々の株価変動よりも、企業の成長性や財務健全性に注目
- 市場タイミングの限界認識:短期的な変動を過度に重視せず、長期的な成長に焦点を当てる
長期投資家は、曜日効果を参考にしつつも、基本的な投資原則に基づいた判断を行うことが重要です。
曜日効果を活用した投資戦略は、市場の微妙な動きを捉える一つの手法ですが、それのみに依存するのではなく、総合的な投資アプローチの一部として位置づけることが賢明です。
市場環境の変化に応じて戦略を適応させ、常に学習と改善を続けることが、成功する投資家の特徴と言えるでしょう。

曜日効果の限界と注意点
曜日効果は興味深い市場現象ですが、投資家はその限界と潜在的なリスクを認識する必要があります。
以下に、曜日効果を利用する際の主な注意点をまとめます。
市場の効率性と曜日効果の関係
効率的市場仮説(EMH)によれば、株価は常に利用可能なすべての情報を反映しているため、曜日効果のような規則性は存在しないはずです。
しかし、現実の市場では曜日効果が観察されることがあり、これは市場の非効率性を示唆しています。
ただし、多くの研究が示すように、市場の効率性は時間とともに向上する傾向があります。そのため、かつて顕著だった曜日効果が徐々に弱まったり、消失したりする可能性があります。
投資家は、市場の効率性の変化に応じて、曜日効果に基づく戦略を適応させる必要があるでしょう。
過去のパターンが将来も続く保証はない
「過去の実績は将来の結果を保証するものではありません」という警告は、曜日効果にも当てはまります。
市場環境、投資家行動、規制などの変化により、過去に観察された曜日効果が将来も同じように続く保証はありません。
例えば、一部の研究では、曜日効果が時間とともに変化したり、消失したりする傾向が報告されています。
投資家は、曜日効果に基づく戦略を採用する際、常に最新のデータと研究結果を参照し、市場の変化に注意を払う必要があります。

まとめ
ポイント
- 火曜日が一番上がりやすい
- 月曜日、金曜日の成績は悪め
- 水曜日も意外と悪い
- 曜日効果が絶対に当てはまるというわけではない
- 月曜日は下がりやすく、金曜日が上がりやすいという研究結果もある
曜日効果と実際にカブヤクが調べた統計を説明してきました。
完全に一致することはなく、相違があったことがわかります。
また、統計を取る期間によっても曜日による騰落率が変わってくるので、絶対的なものではありません。
曜日効果はあくまでも参考程度に頭にとどめておき、他の指標、テクニカルやファンダメンタルに力を入れたほうがいいでしょう。

