ウエルシアホールディングス(3141)の株価が業績悪化を受けて下落傾向にあります。
2024年10月25日時点の株価は1,918.0円で、直近1年の最高値から大きく下落。
2025年2月期の業績予想では、売上高は前期比6.4%増の1兆2,950億円と成長を続ける一方、経常利益は20.4%減の380億円、純利益は28.2%減の190億円と大幅な減益が見込まれています。
この状況下で、多くの投資家が「ウエルシアの株価はどこまで下がるのか」「今が買い時なのか」と考えているでしょう。
本記事では、ウエルシアの株価動向を詳細に分析し、底値の予測と今後の投資戦略について探ります。
そこで、テクニカル分析や業績予想を踏まえた理論株価の計算、さらには今後の業績回復シナリオを検討し、ウエルシア株の投資タイミングと戦略を考えていきます。
ドラッグストア業界の競争激化や個人消費の動向など、外部環境にも注目しながら、ウエルシア株投資の判断材料を提供していきたいと思います。
ポイント
- 業績悪化の要因
- 業績回復シナリオ
- 現在の株価と目標株価の分析
ウエルシアの業績悪化の要因
たばこ取り扱い終了の影響
ウエルシアは2026年2月までに全店舗でたばこ製品の販売を終了すると発表しました。
この決定により、以下の影響が出ています:
- たばこ販売による年間約150億円の売上高(連結売上高の約1.5%)が減少する見込み。
- たばこ購入に伴う関連商品(酒など)の売上も減少。
- たばこは利益率が低いものの、客数や客単価に貢献していた面があり、その減少が業績に影響。
ポイントサービス変更による販売減少
2024年5月から、イオングループのWAON POINTの付与が中心となるポイントサービスへ変更しました。
この変更により以下の影響が出ています::
- 顧客の購買行動に変化が生じ、一時的に客数が減少。
- 新しいポイントシステムへの顧客の適応に時間がかかり、購買頻度が低下。
- 従来のポイント還元率と比較して顧客の満足度が低下した可能性。
人件費増加の影響
賃上げによる人件費の増加が利益を圧迫しています:
- 人手不足解消のための賃上げ実施。
- 最低賃金の上昇に伴う人件費の全体的な増加。
- 物価上昇に対応するための従業員への待遇改善。
- 人件費増加分を商品価格に転嫁することが困難な状況。
これらの要因が重なり、ウエルシアの2025年2月期の連結純利益は前期比28%減の190億円になる見通しとなりました。
特に、たばこ販売終了とポイントサービス変更は、顧客の購買行動に直接影響を与え、売上高の減少につながっています。
一方、人件費の増加は利益率を圧迫し、収益性の低下を招いています。
ウエルシアは、これらの課題に対応するため、食品を中心とした品揃えの強化、チラシ販促の強化、アプリクーポンの配信などの対策を実施していますが、現時点ではマイナス影響を完全に相殺するには至っていません。
現在の株価分析
直近の株価動向
2024年10月25日の終値は1,918円で、前日比0.5円(+0.03%)とほぼ横ばいでした。
直近の株価推移を見ると:
- 10月23日: 1,929円
- 10月24日: 1,917.5円
- 10月25日: 1,918円
過去1ヶ月の動きを見ると、10月7日に2,069円をつけた後、下落傾向が続いています。
10月8日には前日比6.57%下落の1,933円まで急落し、その後も2,000円を回復できていない状況です。
指標分析
PER (株価収益率)
現在のPERは約20.9倍です。
業界平均と比較するとやや高めの水準にあります。
PERが20倍を超えていることから、現在の株価には今後の成長期待が一定程度織り込まれていると考えられます。
しかし、業績予想の下方修正を受けて、市場の期待値が調整される可能性があります。
PBR (株価純資産倍率)
現在のPBRは約1.61倍です。
1倍を上回っており、純資産以上の評価を市場から受けていることを示しています。
PBRが1.61倍であることは、企業の純資産以上の価値を市場が評価していることを示していますが、この水準は業界平均と比較してもそれほど高くはありません。
配当利回り
予想配当利回りは約1.88%です。
日本の上場企業の平均と比べると、やや低めの水準です。
ROE (自己資本利益率)
直近のROEは11.42%です。
10%を超えており、比較的良好な水準と言えます。
ROEが11.42%と良好な水準にあることは、企業の収益性の高さを示しています。
しかし、今後の業績予想を考慮すると、この水準が維持できるかは注視が必要です。
時価総額
約4,022億円の時価総額となっています。
平均目標株価と現在株価との乖離
アナリストの平均目標株価は2,143円となっています。
これに対し、2024年10月25日時点の現在株価は1,918円です。
- 乖離額: 225円
- 乖離率: 約10.5%
この乖離率は、現在の株価が平均目標株価に対して約10.5%低い水準にあることを示しています。
つまり、アナリストの見方では、ウエルシアの株価には約10.5%の上昇余地があると考えられています。
この乖離は、最近の業績下方修正の影響を受けて株価が下落した結果と見られます。
しかし、アナリストの目標株価が現在の株価を上回っていることは、中長期的には株価回復の可能性を示唆しているとも言えるでしょう。
アナリストの評価内訳(中立が多数)
ウエルシアホールディングスに対するアナリストの評価は以下のように分かれています:
- 中立: 多数
- 強気: 一部
- やや強気: 一部
注目すべきは、「中立」の評価が多数を占めていることです。
これは、現在のウエルシアの状況に対して、アナリストたちが慎重な見方をしていることを示しています。
「中立」が多いということは、以下のような解釈ができます:
- 業績悪化の影響を見極めている段階
- 今後の経営戦略や業績回復の兆候を待っている
- 現在の株価水準が適正だと判断している
一方で、「強気」や「やや強気」の評価も存在することから、一部のアナリストは将来の成長性や回復力に期待を寄せていると考えられます。
これらのアナリスト評価を総合すると、現時点では積極的な買いを推奨するには至っていないものの、今後の動向次第では投資機会が生まれる可能性があることを示唆しています。
投資家としては、この「中立」が多数を占める状況を、慎重に様子を見る好機と捉えることができるでしょう。
今後の四半期決算や経営戦略の発表、業績回復の兆候などを注視しながら、投資判断を行うことが賢明です。
底値の予測
テクニカル分析
テクニカル分析では、主に移動平均線を用いて現在の株価トレンドと今後の動きを予測します。
移動平均線
- 5日移動平均線: 下降トレンド
- 25日移動平均線: 下降トレンド
- 75日移動平均線: 横ばい
- 100日移動平均線: 下降トレンド
現在の株価(1918円)は全ての主要な移動平均線を下回っており、短期的には下落トレンドが続いていることを示しています。
特に100日移動平均線を大きく下回っていることから、中長期的にも弱気相場であることがわかります。
RSI(相対力指数)
RSIは30を下回る水準に近づいています。
一般的に30以下は「売られすぎ」を示唆し、反発の可能性が高まると考えられます。
ボリンジャーバンド
下限バンド(-2σ)に近づき、0より下です。
現在の株価がこの水準に近づいていることから、一時的な底値圏に差し掛かっている可能性があります。
これらのテクニカル指標を総合すると、現在の株価は短期的に底値圏に近づいている可能性がありますが、中長期的なトレンド転換の兆候はまだ見られません。
業績予想を踏まえた理論株価の計算
ウエルシアホールディングスの2025年2月期の業績予想を基に、PER(株価収益率)を用いて理論株価を算出します。
2025年2月期の業績予想
- 売上高: 1兆2870億円(前期比5.7%増)
- 純利益: 270億円(前期比2.1%増)
- 予想EPS(1株当たり利益): 130.33円(発行済株式数207,162,752株で計算)
業界平均PERの算出
ドラッグストア業界の平均PERを20倍と仮定します(実際の業界平均は変動する可能性があります)。
理論株価の計算
理論株価 = 予想EPS × 業界平均PER
= 130.33円 × 20
= 2,606.6円
この計算によると、理論株価は2,606.6円となり、現在の株価1,918円と比較すると、約36%の上昇余地があることになります。
しかし、この理論株価は以下の点を考慮する必要があります:
- 業績予想の不確実性(たばこ販売終了の影響など)
- 市場全体の動向
- 競合他社との比較
結論
テクニカル分析では短期的に底値圏に近づいている可能性がありますが、中長期的なトレンド転換の兆候はまだ見られません。
一方で、業績予想を基にした理論株価は現在の株価を大きく上回っており、中長期的な投資視点では割安感があると言えるかもしれません。
これらの分析を参考にしつつ、自身のリスク許容度や投資スタイルに合わせて判断することが重要です。
また、今後の四半期決算や経営戦略の発表にも注目し、適宜投資判断を見直すことが重要です。
今後の業績回復シナリオ
食品中心の品揃え強化策
ウエルシアは、食品カテゴリーの強化を重要な成長戦略の一つとして位置づけています。
この戦略には以下のような効果が期待されています:
- 来店頻度の向上:
食品、特に生鮮食品の品揃えを強化することで、顧客の来店頻度が高まると予想されています。これは売上高の増加に直結する可能性があります。 - 客単価の上昇:
食品と他のカテゴリー(医薬品、日用品など)とのクロスセルが期待できます。これにより、1回の来店あたりの購入金額が増加する可能性があります。 - 新規顧客の獲得:
食品強化型の店舗は、従来のドラッグストアとは異なる顧客層を取り込める可能性があります。特に、日常的な買い物需要を持つ顧客の獲得が期待されます。
ウエルシアの食品強化策は、短期的には利益率を押し下げる要因となる可能性がありますが、中長期的には顧客基盤の拡大と売上高の増加につながると予想されます。
特に、都市部以外の地域での競争力強化に寄与すると思われます。
デジタルトランスフォーメーション(DX)投資の効果
ウエルシアは、DX投資を通じて業務効率化と顧客サービスの向上を図っています。
この戦略には以下のような効果が期待されています:
- 業務効率化によるコスト削減:
在庫管理や発注業務のデジタル化により、人件費や在庫コストの削減が期待できます。これは利益率の改善につながる可能性があります。 - パーソナライズされたマーケティング:
顧客データの分析により、個々の顧客ニーズに合わせた販促活動が可能になります。これは販売効率の向上と顧客満足度の増加につながると期待されています。 - オムニチャネル戦略の強化:
オンラインとオフラインの連携を強化することで、顧客の利便性が向上し、新たな購買機会の創出が期待できます。 - 調剤業務の効率化:
オンライン服薬指導やAIを活用した処方箋チェックシステムの導入により、調剤業務の効率化と安全性の向上が期待されています。
ウエルシアのDX投資は、短期的にはコスト増加要因となりますが、中長期的には業務効率化による利益率の改善と、顧客サービス向上による競争力強化につながると予想されます。
特に、調剤部門での効果が大きいと見込まれます。
結論
ウエルシアの食品中心の品揃え強化策とDX投資は、短期的には利益を圧迫する要因となる可能性がありますが、中長期的には業績回復の重要な鍵となると考えられています。
これらの戦略が成功すれば、売上高の増加、利益率の改善、そして競争力の強化につながり、株価の回復も期待できるでしょう。
これらの戦略の進捗状況と効果を注視しつつ、四半期ごとの業績発表や経営陣のコメントを慎重に分析することが重要です。
特に、食品カテゴリーの売上高推移やDX投資の具体的な成果(コスト削減額、オンライン売上高の増加など)に注目することで、業績回復の兆しを早期に察知できる可能性があります。
リスク要因
個人消費の弱さ
個人消費の弱さは、ウエルシアの業績に大きな影響を与えています。
- 実質個人消費の継続的減少: 2024年1-3月期まで4四半期連続で実質個人消費が減少しています。これは2009年のリーマンショック以来の事態であり、現在の経済状況下では極めて異例です。
- 物価上昇の影響:急速な物価上昇が個人消費を圧迫しています。特に、電気・ガス料金の補助金終了や再生可能エネルギー賦課金の増額により、今後さらなる物価上昇が予想されます。
- 円安と原油高:円安の進行と原油価格の上昇が、将来の物価上昇懸念をさらに高めています。
個人消費の弱さは短期的な現象ではなく、構造的な問題となっている可能性があります。
ウエルシアのような小売業にとっては、売上高の伸び悩みや利益率の低下につながる重大なリスク要因です。
特に、食品や日用品などの生活必需品を扱うドラッグストアは、消費者の節約志向の影響を直接受けやすい立場にあります。
競合他社との競争激化
ドラッグストア業界の競争激化も、ウエルシアの業績に大きな影響を与えています。
- 業界再編の動き: イオン、ツルハ、ウエルシアの経営統合の動きが報じられており、これが実現すれば業界の競争環境が大きく変化する可能性があります。
- 価格競争の激化::個人消費の低迷を背景に、各社が価格競争を強化しています。これは利益率の低下につながる可能性があります。
- オムニチャネル戦略の重要性::オンラインとオフラインの連携が重要になる中、各社がデジタル投資を強化しています。この分野での遅れは競争力の低下につながる可能性があります。
ドラッグストア業界の競争激化は、ウエルシアの利益率に大きな圧力をかけています。
特に、大手企業の統合が実現すれば、規模の経済による競争力強化が予想され、ウエルシアにとっては大きな脅威となるでしょう。
一方で、この状況はウエルシアにとって、独自の強みを活かした差別化戦略の重要性を示唆しています。
結論
これらのリスク要因を考慮すると、ウエルシアの株価の底値を正確に予測することは困難です。
しかし、以下の点に注目することで、投資判断の参考にするとができるでしょう。
- 個人消費の動向:実質賃金の回復や物価上昇率の鈍化など、個人消費の回復兆候が見られるかどうか。
- 業界再編の進展:大手企業の統合がどのように進展するか、そしてウエルシアがどのように対応するか。
- 独自の強み:ウエルシアが競合他社との差別化をどのように図るか(例:プライベートブランドの強化、デジタル戦略の進展など)。
これらの要因を注視しつつ、自己のリスク許容度に応じて慎重に投資判断を行うことが重要です。
また、四半期ごとの業績発表や経営陣のコメントにも注目し、状況の変化に応じて柔軟に戦略を見直すことをお勧めします。
まとめ
ポイント
- 短期:見送り
- スイング~中期:見送り
- 長期:検討
- 配当目的:見送り
基本的には今の段階では手を出しずらい状況です。
まだまだ下落する可能性はありますし、今回下方修正したことにより、次回の決算で劇的な改善がみられるとは思いません。
個人的には今の株価でうねうねし、次回の決算でまた下落すると思っているので見送りです。
配当利回りも低いので、高配当を狙うのであれば他の銘柄を見たほうがいいでしょう。
参考:
- https://www.welcia.co.jp/ja/ir/library/integrated/main/00/teaserItems1/00/link/welcia_2024_JP_0904_wp.pdf
- https://gyokai-search.com/4-drag-per.htm
- https://minkabu.jp/stock/3141
- https://kabutan.jp/stock/finance?code=3141