

この記事は制度特化版です。「売って枠が戻る=簿価復活」だけに絞り、計算の考え方・タイミング・注意点・実務フローをコンパクトにまとめます。
取り崩しの方法論(定率/定額/バケット法)は扱いません。
関連:NISAの出口戦略(取り崩しの型)|一括vsつみたて(買い方の比較)|NISAと特定口座の住み分け
※新NISAは生涯非課税保有限度額1,800万円(成長投資枠上限1,200万円)、年間投資枠は最大360万円です。本文は「売却で翌年以降に戻る簿価」の取り扱いに限定して解説します。
\まずは口座と基本設定を整える/
「簿価復活」の結論だけ先取り(制度の3ポイント)


- 復活の基準:取得価額(簿価)でカウント。
- 復活の時期:売却年は戻らず、翌年以降に復活。
- 年間投資枠:復活額は上乗せなし(年間最大360万円とは別管理)。
ポイント(制度の肝)
- 同年再利用は不可、復活は翌年以降限定。
- 簿価(買値)で復活、売値は関係なし。
- “翌年の再投資上限=復活額(簿価相当)+当年の年間投資枠”が基本式。
どれだけ戻る?簿価復活の計算例(利益/損失/一部売却)


ケース | 枠/商品 | 取得価額(簿価) | 売却価額 | その年の扱い | 翌年以降の復活額 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
A 利益で全売却 | つみたて枠/投信 | 10万円 | 12万円 | 同年は戻らない | 10万円 | 売値は考慮しない |
B 損で全売却 | 成長枠/ETF | 20万円 | 16万円 | 同年は戻らない | 20万円 | 損でも簿価で復活 |
C 一部売却 | 成長枠/個別株 | 30万円(1/2売却) | 15万円分売却 | 同年は戻らない | 簿価の半分=15万円 | 割合で簿価按分(=復活額も同割合) |
※翌年以降に簿価相当額のみ復活。同年再利用不可・年間投資枠に上乗せなし。翌年の再投資上限は復活額(簿価相当)+当年の年間投資枠です。
👉 再投資の具体設計は翌年の復活額+その年の年間投資枠内で計画(住み分けはNISA vs 特定参照)。
タイミングと順番:同年不可を前提に“翌年設計”へ


- 売却年:枠は戻らない(再利用不可)。
- 翌年以降:簿価相当額のみ復活(年間投資枠に上乗せなし)。
- 翌年の再投資上限:復活額(簿価相当)+当年の年間投資枠が上限。
- 売却順の原則:調整は特定→NISAが合理的(損益通算・繰越はNISA不可)。
👉 取り崩しや売却の「方法論」(定率/定額/現金クッション)は制度とは別テーマ。設計は出口戦略で詳説。
実務フロー(制度特化版):売る前→売る時→売った後


① 売る前(設計)
- 売却理由と希望時期をメモ。
- 取得価額(簿価)と保有数量を確認。
- 可能なら売却は特定口座→NISAの順で(損益通算の余地を活用)。
② 売る時(執行)
- 売却数量と約定日、費用(手数料/為替)を記録。
- 一部売却は売却割合に応じて簿価相当額が減少(=翌年の復活額も同割合)。
③ 売った後(翌年設計)
- 翌年に復活する簿価相当額を算出。
- 年間投資枠と合算し、再投資先・金額・スケジュールを決める。
- 買い方は一括vsつみたてを参照(本記事では扱わない)。
\ルールを踏まえた“翌年設計”で迷いをなくす/
よくある誤解と落とし穴(制度だけを短く)
誤解1:「高値で売れたから戻る枠も多い」
戻るのは簿価(取得価額)相当で、売値は関係ありません。
誤解2:「売って空いた枠に同年で入れ直せる」
不可。翌年以降に簿価相当で復活、同年再利用はできません。
落とし穴:「NISAで損を確定してしまう」
NISAの損失は損益通算・繰越控除が不可。整理や調整は原則特定口座で検討しましょう(住み分けはこちら)。
まとめ(制度のキモだけ)
ポイント(制度の最重要3行)
- 売却枠の復活=翌年以降に簿価相当額(同年不可)。
- 売値は無関係、簿価(買値)で計算。
- 翌年の再投資上限=復活額(簿価相当)+当年の年間投資枠。上乗せはできない。


\今日から一歩。復活ルールを前提に“翌年設計”/