日経平均株価は、日本の経済状況を示す代表的な株価指数であり、国内外の投資家にとって重要な指標です。
東京証券取引所に上場する225の主要企業の株価をもとに算出されるこの指数は、日本全体の景気や経済動向を把握するための重要な手段となっています。
日経平均株価の動向を理解することは、投資判断や経済予測において非常に有益であり、個人投資家から機関投資家まで幅広い層が注目しています。
一方、アノマリーとは、通常の市場理論では説明が難しい、特定の時期や条件で観察される市場のパターンや現象を指します。
これらはファンダメンタルズ分析やテクニカル分析では捉えきれないことが多く、経験的に観測されることから、多くの投資家が注目しているものです。
例えば、「1月効果」や「週末効果」など、特定の時期や条件下で株価が一定のパターンを示すことがあるのです。
アノマリーは理論的には説明が難しいものの、経験的に観測されるため、多くの投資家がこれを利用して市場平均を上回る成果を狙っています。
これらを踏まえて、今回は月ごとの動きとアノマリーを探っていきます。
ココがポイント
- アノマリーとは、通常の市場理論では説明が難しい、特定の時期や条件で観察される市場のパターンや現象
- 特定の時期や条件下で株価が一定のパターンを示すことがある
月ごとの動き
1月:1月効果
1月効果
1月は株価が上昇しやすい傾向があるとされる「1月効果」が知られています。
ただし、近年ではこの効果が弱まっている可能性があります。
リターン・リバーサル
1月は前年の相場の流れが反転しやすい月とされています。
12月まで上昇していた株が1月から下落したり、逆に12月まで下落していた株が1月から上昇したりする傾向があります。
年間相場の指標
1月の相場動向がその年の株価トレンドを示唆するという見方もあります。
ただし、実際のデータを見ると、必ずしも強い相関関係は見られません。
機関投資家の動き
年末年始のリスクオフで縮小したポジションを、新年のスタートで改めて買いから入れる「新年効果」が見られることがあります。
個人投資家の行動
12月に行った節税対策のための損切り売りの買い戻しが1月に入ることがあります。
変動の大きさ
1月は他の月と比べて大きな変動が起こりやすい傾向があります。
過去には2桁の上昇や下落が見られた年もあります。
小型株への影響
1月効果は特に小型株において顕著に現れる傾向があるとされています。
2月:節分天井
底堅い相場展開
2月は1月の新春相場に続いて、比較的底堅い相場展開になる傾向があります。
ただし、月の後半にかけては調整局面に入りやすくなります。
節分天井
「節分天井・彼岸底」という相場格言があり、2月上旬(節分の頃)に高値をつけた後、下降する傾向があります。
前半堅調、後半下落
過去3年のチャートを見ると、「前半は堅調、後半にかけては下落しやすい」という動きが見られます。
小型株の優位性
1月が大型株中心の上昇だった場合、2月は小型株が優位になる傾向があります。
春節の影響
中国の春節をはじめとするアジアの旧正月休暇により、代替市場として日本市場が買われやすくなる傾向があります。
決算発表の影響
3月期決算企業の第3四半期決算発表が本格化し、投資家の注目を集めます。
配当取りの動き
中旬から下旬にかけて、3月期末に向けた配当取りの動きが活発化します。
米国の経済指標の影響
米国の雇用統計やCPIなどの経済指標の結果によっては、相場が大きく変動する可能性があります。
小売株の好調
2月頃から小売株のパフォーマンスが良好になる傾向があります。
新学期や新生活の準備、アジアからの旧正月旅行客の消費、年度末に向けたセールなどが要因とされています。
3月:彼岸底
月末に向けて盛り上がる傾向
3月は月末に向けて株価が上昇しやすくなります。
これは期末特有の好需給に支えられているためです。
前半下落・後半上昇のパターン
3月前半は調整局面になりやすく、後半から上昇する傾向があります。
配当・優待取りの影響
月後半には配当や株主優待の権利取りを狙った個人投資家の買いが入りやすくなります。
機関投資家の動き
年度末に向けて機関投資家による利回り評価引き上げのためのドレッシング買いが入りやすくなります。
アメリカ株との連動
2月から3月にかけてはアメリカ株が下落しやすい季節性があり、日本株も連れ安となりやすい傾向があります。
外国人投資家の影響
12月から翌年3月までの4カ月間、外国人投資家は平均して買い越す傾向があり、これが株価上昇の一因となっています。
重要イベントの影響
春闘、日銀の金融政策決定会合、アメリカのFOMC、中国の全人代など、重要なイベントが集中し、相場が不安定になる可能性があります。
4月:新年度効果
不安定な需給バランス
4月は新年度の始まりであり、需給バランスが不安定になりやすい傾向があります。
これにより、相場が上下に振れやすくなります。
利益確定売りの増加
金融機関が新年度の始まりに利益を確定するため、株式を売却する傾向があります。
これは特に前年度の株価上昇が大きかった場合に顕著になります。
外国人投資家の買い越し傾向
4月は外国人投資家が日本株を買い越す傾向がありますが、需給バランスの不安定さにより、相場が上下に振れやすくなります。
自社株買いの減少
4月は企業による自社株買いが減少する傾向があります。
多くの企業は5月以降に自社株買いを発表することが多く、4月は相対的に少ない傾向にあります。
決算発表の影響
3月期決算企業の通期決算発表が4月下旬から始まり、5月中旬にピークを迎えます。
これらの決算内容や次年度の見通し、株主還元策などが相場に影響を与えます。
株主還元への注目
東証の「資本コストを意識した経営」要請により、特に自己資本比率の高い企業に対して、自社株買いなどの株主還元策への圧力が高まっています。
ゴールデンウィーク前の動き
4月後半はゴールデンウィークを控えて、投資家の動きが鈍くなる可能性があります。
5月:セルインメイ
セルインメイ (Sell in May)
「5月に売れ」という有名な格言があり、5月は株価が下落しやすい傾向があるとされています。
これは海外の決算月でもあり、株価が大きく下げやすい月とされています。
下落トレンドの始まり
5月から10月にかけては、アノマリーの世界では概ね「下げ相場」とされています。
英語圏では「五月に売って、そのまま(市場に)帰ってくるな」("Sell in May and Go Away")というアノマリーもあります。
夏枯れ相場への移行
5月以降、株式市場は「夏枯れ相場」に移行していく傾向があります。
過去データの分析
5月は年間を通じて株価が下落しやすい月の一つとなっています。
外国人投資家の動向
5月は外国人投資家の売り越しが増加する傾向があり、これが株価下落の一因となっている可能性があります。
ゴールデンウィークの影響
日本特有の要因として、ゴールデンウィーク明けの相場動向に注目が集まります。
連休中の海外市場の動きや、休暇明けの投資家心理が相場に影響を与える可能性があります。
決算発表の影響
5月は3月期決算企業の本決算発表が集中する時期であり、これらの決算内容や次年度の業績見通しが相場に大きな影響を与えます。
6月:株主総会ラリー
日本株優位の展開
6月は日本株が優位な展開となりやすい月です。
アメリカ株が夏に向けて調整色が強まるのに対し、日本株は上昇しやすい傾向があります。
月初から中旬にかけての堅調な推移
6月の初旬から中旬にかけては、株価が堅調に推移する傾向があります。
中旬での一時的な軟調
中旬頃、特にメジャーSQの前後で、一時的に軟調になる傾向があります。
月末にかけての回復基調
中旬の軟調後、月末にかけては回復基調になりやすいです。
株主総会の影響
6月は株主総会シーズンであり、これに関連したニュースや株主提案が株価に影響を与えることがあります。
配当金再投資効果
月末にかけて配当金の支払いが本格化し、その再投資効果が期待されます。
小売、食料品などのディフェンシブセクターが上昇しやすい傾向があります。
決算発表の影響
3月期決算企業の決算発表が出揃うことで、買いが優勢になりやすいです。
夏枯れ相場前の最後の稼ぎ時
7月以降の夏枯れ相場に入る前の、最後の稼ぎ時と考えられています。
7月:夏枯れ開始
夏枯れ相場の始まり
7月は「夏枯れ相場」の始まりとされ、材料に乏しく、投資家が積極的に手を出しにくい月です。
市場参加者や取引量が減少する傾向があります。
売買代金の減少
一年を通じて最も売買代金が少ないのが7月相場です。
海外投資家のバカンス前のポジション手仕舞いや、日本のお盆休みなどが影響しています。
ETFの分配金捻出売り
7月第2週には、ETF(上場投資信託)の決算に伴う分配金捻出のための売りが発生し、一時的な需給悪化が懸念されます。
決算発表の影響
3月期決算企業の第1四半期決算発表が始まります。
特に上方修正を行った企業の株価パフォーマンスに注目が集まります。
レンジ相場の傾向
過去のデータを見ると、7月の日経平均株価はレンジ内で動きつつも、上下どちらか一方向にトレンドが出ると、それが続く傾向があります。
外国人投資家の動向
7月は外国人投資家の売り越しが増加する傾向があり、これが株価下落の一因となる可能性があります。
セクター別の動き
夏に向けて旅行・レジャー関連銘柄や、ビール銘柄が動きやすくなる傾向があります。
米国の金融政策の影響
7月下旬に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果が、相場に大きな影響を与える可能性があります。
月間パフォーマンス
過去のデータでは、7月の日経平均株価のパフォーマンスは芳しくない傾向にあります。
8月:お盆休み
変動性の高まり
8月は株価の変動が大きくなる傾向があります。
2024年8月初旬には、日経平均株価が1日で4,451ポイント下落し、過去最大の下げ幅を記録しました。
その翌日には3,217ポイントの上昇を見せ、これも過去最大の上げ幅となりました。
夏枯れ相場の継続
7月から続く「夏枯れ相場」の影響で、取引量が減少する傾向があります。
特にお盆休み期間中は市場参加者が減少し、流動性が低下します。
米国経済指標の影響
8月は米国の経済指標の発表に市場が敏感に反応する傾向があります。
特に雇用統計やインフレ関連のデータが注目されます。
為替相場の影響
円ドル相場の変動が日本株に大きな影響を与えます。
円高傾向が強まると輸出企業の業績悪化懸念から株価が下落しやすくなります。
決算発表の影響
3月期決算企業の第1四半期決算発表が8月上旬に集中します。
これらの決算内容や業績見通しが相場に影響を与えます。
海外投資家の動向
8月は海外投資家の売買動向が相場を左右する傾向があります。
特に欧米の投資家が夏季休暇に入る時期であり、ポジション調整の動きが見られることがあります。
政策期待
8月下旬から9月にかけて、政府の経済対策への期待が高まることがあります。
これが相場を下支えする要因となる可能性があります。
セクター別の動き
夏季の電力需要増加を背景に、電力・ガス関連銘柄が注目されることがあります。
また、猛暑による飲料・冷房関連銘柄への注目も高まります。
9月:低パフォーマンス
下落傾向が強い月
9月は年間を通じて最も株価が下落しやすい月の一つとされています。
低いパフォーマンス
夏から秋にかけて、特に9月は日経平均株価のパフォーマンスが最も低調になる傾向があります。
突発的なショックの可能性
9月は突発的なショックが起きやすい月としても知られています。
過去には、リーマンショックや中国恒大集団の問題など、大きな市場の混乱が9月に発生しています。
配当取りの動き
9月末に向けて、3月期決算企業の配当取りが本格化します。
機関投資家の動向
9月は機関投資家が月末に自身の決算を控えているため、積極的な買いが出にくい傾向があります。
米国の経済指標の影響
米国のCPI(消費者物価指数)やFOMC(連邦公開市場委員会)の結果が、9月の日本株にも大きな影響を与える可能性があります。
イベント関連銘柄の動き
ラグビーワールドカップや東京ゲームショウなど、9月に開催される大型イベントに関連する銘柄が注目を集めることがあります。
年末に向けての転換点
9月の下落後、10月以降は徐々に回復する傾向があり、特に11月と12月は上昇しやすくなります。
10月:稲穂相場
変動性の高まり
10月は株価の変動が大きくなる傾向があります。過去には大きな下落や上昇が見られた月でもあります。
「稲穂相場」
10月は「稲穂相場」と呼ばれ、上値が重くなりやすい傾向があります。特に年初来の相場が好調だった年ほど、この傾向が強まるとされています。
月間では上昇傾向
過去のデータを見ると、10月の月間騰落率は平均してプラスになる傾向があります。ただし、日次ベースでは大きな上下動が見られることがあります。
米大統領選挙の影響
米大統領選挙が行われる年の10月末から年末にかけて、日経平均株価は上昇しやすい傾向があります。
決算発表の影響
10月下旬から11月にかけて3月期決算企業の中間決算発表が始まります。
これらの決算内容や業績見通しが相場に影響を与えます。
海外要因の影響
米国の経済指標やFRBの金融政策、中国の国慶節連休明けの動向など、海外要因が日本株に大きな影響を与える傾向があります。
年末に向けての転換点
10月は、その後の年末高に向けての弾みとなる月となる可能性があります。
特に9月の相場が悪かった場合、10月からの回復が期待されることがあります。
セクター別の動き
中国の国慶節連休に関連して、インバウンド関連銘柄が注目されることがあります。
11月:秋高
上昇傾向が強い月
11月は年間を通じて株価が上昇しやすい「勝ち月」の1つとされています。
外国人投資家の買い越し
10月、11月、12月と外国人投資家の買い越し姿勢が強まる傾向があります。
これが株価上昇の一因となっています。
中間決算発表の影響
11月は3月期決算企業の中間決算発表が本格化する時期です。
好決算の銘柄が買われ、株価が上昇する要因となります。
月内の傾向
月の前半は調整局面になりやすく、後半から上昇する傾向があります。
月末にかけても上昇傾向が見られます。
年末商戦への期待
11月下旬からは年末商戦への期待が高まり、小売関連銘柄などが注目されます。
配当関連の動き
11月下旬から12月にかけて配当取りの動きが活発化し、特に最終週は配当支払い効果で株価が上昇しやすくなります。
海外イベントの影響
中国の「独身の日」(11月11日)やアメリカの「ブラックフライデー」など、海外の大型商戦イベントが日本企業の業績や株価に影響を与える可能性があります。
サンクスギビング・デー前後の上昇
アメリカの感謝祭(サンクスギビング・デー、11月第4木曜日)の前後は相場が高くなりやすいというアノマリーがあり、日本株にも影響を与える可能性があります。
12月:年末高
年末高への期待
12月は「年末高」への期待が高まる月です。
「掉尾の一振」という相場格言があり、年末に株価が高値をつける傾向があります。
月内の変化
月の前半と後半で景色が異なります。
前半は節税対策の売りが出やすく株価が下落しやすい傾向がありますが、中旬以降は上昇基調になりやすいです。
外国人投資家の買い越し
12月から翌年3月までの4カ月間、外国人投資家は平均して買い越す傾向があり、これが株価上昇の一因となっています。
年末商戦の影響
年末商戦関連銘柄への注目が高まります。
配当関連の動き
配当金再投資効果や高配当銘柄への見直し買いが入りやすい時期です。
IPOラッシュ
師走恒例のIPOラッシュが相場に影響を与えることがあります。
海外要因の影響
米FOMCや日銀金融政策決定会合など、重要イベントの結果が相場に大きな影響を与えます。
薄商い
中旬以降は外国人投資家や日本の機関投資家がクリスマス休暇に入るため、極端な薄商いとなり、個人投資家主導の相場になりやすいです。
まとめ
月ごとの動きとアノマリーを解説してきました。
あくまでアノマリーなので、毎回このように動くとは限りません。
アノマリー通りであればそのまま乗っかってトレードを進めていけばいいですし、逆にアノマリーに反しているのであれば、市場に何か異変が起きていると考えることができます。
なぜこうなるのかと具体的に説明できないのがアノマリーです。
知っていると知らないとではトレードの結果に大きな影響が出ると私は思っています。
あくまでアノマリーはトレードする上での参考の一つですが、知っておいて損はないでしょう。
参考:
- https://www.bank-daiwa.co.jp/column/articles/2021/2021_295.html
- https://www.pictet.co.jp/investment-information/market/deep-insight/20220104.html
- 2月の株価はどうなる? 節分天井か、それとも… 春節の向こうに見えてくる波乱の予感 かぶまど|株価の向こう側を知るメディア
- 3月の株価はどうなる? 重要イベント満載で相場は春の嵐か、サクラ咲くか かぶまど|株価の向こう側を知るメディア
- https://www.smd-am.co.jp/market/ichikawa/2021/12/irepo211207/
- 売り逃げ? 実は上昇する? 気になる5月相場の特徴とは【今月の株価はどうなる?】 かぶまど|株価の向こう側を知るメディア
- 投資の月間別アノマリーをまとめてみた(日本株、米国株、FXなど)投資家なら必須! | アカツキジャーナル