株式投資において、タイミングは成功の鍵を握る重要な要素です。
その中でも、月別のパフォーマンスは投資戦略を立てる上で欠かせない指標となっています。
なぜなら、株式市場には季節性やパターンが存在し、特定の月に上昇や下落の傾向が見られることがあるからです。
このパターンを理解することで、投資家は市場の動きを予測し、より効果的な投資判断を下すことができます。
例えば、統計的に上昇確率が高い月に買い増しを行ったり、下落傾向の強い月には利益確定や新規投資を控えたりするなど、戦略的なアプローチが可能となります。
しかし、単年や数年のデータでは、一時的な要因や偶然の影響を受けやすく、信頼性に欠ける可能性があるのです。
そこで、過去20年間という長期にわたるデータを分析することの意義が浮かび上がります。
過去20年間のデータを用いることで、短期的な変動や特殊要因を平準化し、より信頼性の高い傾向を見出すことができるのです。
この期間には、リーマンショックや新型コロナウイルスパンデミックなど、大きな市場変動も含まれており、様々な経済環境下での月別パフォーマンスを観察できます。
さらに、20年という期間は、技術革新や産業構造の変化、投資家の行動パターンの変化なども含んでおり、現代の市場環境により適した分析が可能です。
本記事では、2005年から2024年までの20年間の日経平均株価の月別パフォーマンスを詳細に分析し、最も投資に適した月、そして注意が必要な月を明らかにします。
この分析結果は投資戦略に新たな視点をもたらし、より洗練された投資判断の一助となるでしょう。
ポイント
- 過去の月別の傾向を知る
- 傾向を知っておくことで投資に役立つ
- 勝ちやすい月は11月
- 直近5年間では5月が強い
- 負けやすい月は8月
- 直近5年間では7月が弱い
分析方法
使用したデータの説明(2005年から2024年までの20年間)
「HYPER SBI 2」を用いて、2005年1月から現在までの株価、騰落率を算出。
月別騰落率の計算方法
騰落率の計算方法は「前月の月末の終値」と「月末の終値」を用いて算出した。
例
騰落率 = {(当月の終値 ÷ 前月の終値)- 1} × 100
- 2004/12/30の終値:11,488.76
- 2005/1/31の終値:11,387.59
騰落率(%) = { ( 11,387.59 ÷ 11,1488.76) - 1 } × 100
= -0.9 %
月別パフォーマンスの概要
ポイント
- 最も勝ちやすい月:11月と12月で68.4%(13勝6敗)
- 騰落率トップ:11月で2.9%
- 最も負けやすい月:8月で45.0%(9勝11敗)
- 騰落率ワースト:8月で-0.8%
月別の勝敗分析
2005~2024年:各月の勝ち数・勝率
勝ち数 | 年数 | 勝率 | 騰落率 | |
1月 | 11 | 20 | 55.0% | -0.7% |
2月 | 12 | 20 | 60.0% | 0.6% |
3月 | 11 | 20 | 55.0% | 0.8% |
4月 | 11 | 20 | 55.0% | 1.5% |
5月 | 13 | 20 | 65.0% | 0.3% |
6月 | 13 | 20 | 65.0% | 0.6% |
7月 | 10 | 20 | 50.0% | 0.4% |
8月 | 9 | 20 | 45.0% | -0.8% |
9月 | 11 | 20 | 55.0% | 0.3% |
10月 | 11 | 20 | 55.0% | 0.2% |
11月 | 13 | 19 | 68.4% | 2.9% |
12月 | 13 | 19 | 68.4% | 2.0% |
※2024年11月現在
ポイント
- 最も勝ちやすい月:11月と12月で68.4%(13勝6敗)
- 騰落率トップ:11月で2.9%
- 最も負けやすい月:8月で45.0%(9勝11敗)
- 騰落率ワースト:8月で-0.8%
2020~2024年:各月の勝ち数・勝率
勝ち数 | 年数 | 勝率 | 騰落率 | |
1月 | 3 | 5 | 60.0% | 1.2% |
2月 | 3 | 5 | 60.0% | 0.5% |
3月 | 4 | 5 | 80.0% | 0.1% |
4月 | 2 | 5 | 40.0% | 0.0% |
5月 | 5 | 5 | 100.0% | 3.5% |
6月 | 3 | 5 | 60.0% | 1.7% |
7月 | 1 | 5 | 20.0% | -0.8% |
8月 | 3 | 5 | 60.0% | 1.6% |
9月 | 2 | 5 | 40.0% | -1.4% |
10月 | 2 | 5 | 40.0% | 0.7% |
11月 | 3 | 4 | 75.0% | 5.3% |
12月 | 2 | 4 | 50.0% | 0.1% |
※2024年11月現在
ポイント
- 最も勝ちやすい月:5月で100%(5勝0敗)
- 騰落率トップ:11月が5.3%でトップ
- 最も負けやすい月:7月で20.0%(1勝4敗)
- 騰落率ワースト:9月が-1.4%でワースト
統計を取る範囲によって勝率が異なってくることがわかります。
過去20年では11月が一番成績が良かったですが、直近5年間では5月が勝率100%と一番高い結果となっています。
しかし、騰落率では11月が5.3%圧倒的な成績を残していることがわかります。
また、直近5年間での弱い月は7月で一度しか勝っていません。
過去20年では8月だったので、総じて夏場は弱いことがわかります。
月別の詳細なアノマリーを知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
-
【日経平均株価】月ごとの動きとアノマリーを探る
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-
投資成功の鍵:月別株式市場アノマリーの徹底解説と実践戦略
続きを見る
最強の投資月
最強の投資月は11月
過去20年間の日経平均株価の月別データを分析した結果、最強の投資月は11月であることが明らかになりました。
11月の平均騰落率は2.9%で、20年間で最も高い数値を記録しています。
また、勝率(上昇した年の割合)も68.4%と高く、安定した上昇傾向を示しています。
直近5年間を見ても勝率、騰落率が高く、安定して勝てる月だと言っていいでしょう。
この結果は、いわゆる「年末ラリー」と呼ばれる現象と一致しており、投資家の間で広く知られている傾向を裏付けるものとなっています。
11月が強い理由の考察
- 決算発表シーズン:
10月下旬から11月にかけて多くの企業の中間決算発表が集中します。好決算の発表や業績見通しの上方修正が相次ぐことで、投資家心理が改善し買い意欲が高まります。 - 配当関連の動き:
3月期決算企業の中間配当権利確定日が9月末のため、10月初めの配当落ち後の調整が11月には一巡し、配当利回り狙いの投資家の買いが入りやすくなります。 - 年末に向けた運用姿勢の変化:
機関投資家が年末に向けてポートフォリオの調整を行い、リスク資産への配分を増やす傾向があります。特に、年初来のパフォーマンスが悪い投資家が挽回を狙って積極的な買いに出ることがあります。 - 外国人投資家の動向:
10月から12月にかけて、外国人投資家の買い越し傾向が強まることが統計的に観測されています。これは日本の企業業績や経済指標の改善期待などが背景にあると考えられます。 - 心理的要因:
投資家の間で「11月は株価が上がりやすい」という認識が広まっており、それが自己実現的に作用している可能性もあります。
これらの要因が複合的に作用し、11月の日本株式市場を押し上げる傾向があると考えられます。
ただし、このような季節性は必ずしも毎年同じように現れるわけではなく、その年の経済状況や国際情勢などによっても大きく左右されることに注意が必要です。
弱い月の特徴
弱い投資月は8月前後
過去20年間の日経平均株価の月別データを分析した結果、弱い投資月は8月であることが明らかになりました。
8月の平均騰落率は-0.8%で、20年間で最も低い数値を記録しています。
勝率(上昇した年の割合)は40.0%と低く、半分以下という結果になりました。
しかし、直近5年間を見ると、勝率は60.0%と過去20年間と比較して勝ち越すという対照的な結果に。
8月の前後を見てみると7月が20.0%、9月が40.0%と勝率が低いことがわかります。
この結果は、いわゆる「夏枯れ相場」と呼ばれる現象と一致しており、投資家の間で広く知られている傾向を裏付けるものとなっています。
夏場が弱い理由の考察
- 夏枯れ相場:
7月から8月にかけて市場の取引量が減少し、相場の動きが鈍くなる傾向があります。 - 夏季休暇の影響:
市場参加者が8月にかけて夏季休暇を取るため、休み前にポジションを手仕舞う動きが見られます。 - 株主総会シーズンの終了:
6月に株主総会シーズンが一巡し、その後の材料不足により相場が停滞しやすくなります。 - 決算発表前の様子見:
7月下旬から4-6月期の決算発表シーズンが始まるため、それまでは相場を左右する個別材料に乏しくなります。 - セルインメイの余波:
5月から始まる「セルインメイ(Sell in May)」の影響が7月まで続くことがあります。 - 海外投資家の動向:
夏季休暇シーズンにより、海外投資家の取引が減少し、市場の流動性が低下します。 - 政治的要因:
3年に一度の参議院選挙が7月に行われることがあり、政治的不確実性が株価に影響を与える可能性があります。 - 新年度の業績見通しの調整:
4月に始まる新年度の業績見通しが、7月頃に下方修正されることがあります。
これらの要因が複合的に作用し、7月~9月の夏場の日経平均株価の上昇確率を低下させる傾向があります。
ただし、これはあくまで傾向であり、毎年必ずこのようになるわけではありません。個別の経済状況や国際情勢などによっても大きく左右されることに注意が必要です。
季節性のパターン
四半期ごとや半期ごとの傾向分析
四半期ごとの傾向
第1四半期(1-3月):上昇傾向が強い
1月は「1月効果」により上昇しやすく、3月は年度末要因で上昇する傾向があります。
第2四半期(4-6月):やや弱含み
5月は「セル・イン・メイ」の格言通り、下落しやすい傾向があります。
第3四半期(7-9月):最も弱い期間
8月は「夏枯れ相場」、9月は歴史的に最も下落しやすい月として知られています。
第4四半期(10-12月):強い上昇傾向
年末にかけての「年末ラリー」などの影響で上昇しやすい期間です。
半期ごとの傾向
上半期(1-6月):比較的堅調
1-3月の上昇傾向が全体を押し上げる傾向があります。
下半期(7-12月):変動が大きい
7-9月の下落傾向と10-12月の上昇傾向が混在し、変動が大きくなります。
年末年始や夏場などの特徴的な期間の分析
年末年始(12月-1月)
- 「年末ラリー」や「掉尾の一振」と呼ばれる現象により、12月後半から株価が上昇しやすい傾向があります。
- 1月は「1月効果」により、特に月初に上昇する傾向が強いです。
- 海外投資家の買い越しが多く、上昇確率が高い期間です。
夏場(7-8月)
- 「夏枯れ相場」と呼ばれ、取引量が減少し、株価の変動が小さくなる傾向があります。
- 8月は特に取引が少なく、大きなニュースがあると急激な変動が起こりやすい時期です。
- 過去に大きな危機やショックが発生しやすい時期でもあります(例:1971年ニクソン・ショック、2007年パリバ・ショック)。
これらの傾向は過去のデータに基づくものであり、必ずしも毎年同じように現れるわけではありません。
しかし、長期的な傾向として認識し、投資戦略の一つの参考にすることができます。
また、これらの季節性は、企業の決算発表時期、海外投資家の動向、政策決定のタイミングなど、様々な要因が複合的に作用して生じていると考えられます。
投資戦略への応用
月別パフォーマンスデータの活用
投資タイミングの最適化
過去のデータから、11月から3月にかけて株価が上昇しやすい傾向が見られます。
この期間に投資を集中させることで、リターンを最大化できる可能性があります。
リスク管理
7月から9月にかけては下落リスクが高まる傾向があるため、この期間はポートフォリオのリスクを低減させる戦略を取ることができます。
セクター別投資戦略
月別の業種別パフォーマンスを分析し、特定の月に強い傾向を示すセクターに注目して投資することができます。
長期投資戦略の補完
長期投資を基本としつつ、月別パフォーマンスデータを参考に、買い増しや利益確定のタイミングを調整することができます。
短期トレーディング
デイトレーダーやスイングトレーダーにとって、月別の傾向は短期的な売買戦略を立てる上で有用な情報となります。
注意点や限界について
過去の実績は将来の保証ではない
月別パフォーマンスは過去のデータに基づくものであり、必ずしも将来同じパターンが繰り返されるとは限りません。
マクロ経済環境の変化
金融政策、国際情勢、技術革新などの要因により、過去の傾向が通用しなくなる可能性があります。
統計的有意性
20年間のデータは長期的な傾向を示すには十分ですが、統計的にはまだ限られたサンプル数であることに注意が必要です。
他の要因との相互作用
企業の決算発表、政治イベント、自然災害など、月別以外の要因が株価に大きな影響を与える可能性があります。
自己実現的予言の可能性
多くの投資家がこのデータに基づいて行動すると、それ自体が市場動向に影響を与え、従来の傾向が変化する可能性があります。
個別銘柄との乖離
日経平均全体の傾向と個別銘柄のパフォーマンスは必ずしも一致しないため、銘柄選択には別の分析が必要です。
短期的な変動
月別データは長期的な傾向を示すものであり、短期的な市場の変動を予測するには適していません。
これらの点を考慮しながら、月別パフォーマンスデータを投資判断の一要素として活用することが重要です。
他の分析手法や情報源と組み合わせて、総合的な投資戦略を立てることが望ましいでしょう。
まとめ
ポイント
- 過去の月別の傾向を知る
- 傾向を知っておくことで投資に役立つ
- 勝ちやすい月は11月
- 直近5年間では5月が強い
- 負けやすい月は8月
- 直近5年間では7月が弱い
おおむね、年末が強く、夏場が弱いということがお分かりいただけたと思います。
しかし、個別銘柄にも特有の癖があるので、すべて日経平均のアノマリー、データ通りには決して行きません。
あくまでもデータは参考程度にとどめて置き、自分の投資スタイルに合わせてチャートなどのテクニカル、決算の理解を深めるファンダメンタルなどの知識を習得し、総合的な判断でトレードするのが最適でしょう。