

2008年に発生したリーマンショックは、世界的な金融危機を引き起こし、日本経済にも深刻な影響を与えました。
日経平均株価は2009年3月に7,054円というバブル崩壊後の最安値を記録し、1989年末の最高値から82%の大幅な下落となりました。

その後、アベノミクスや金融緩和政策、円安の進行が輸出企業の収益を改善し、株価回復を後押ししました。
日経平均株価がリーマンショック前の水準を回復するには約4年を要し、2013年にようやく安定した成長基調に戻りました。

ポイント
- リーマンショックで日経平均株価は2009年3月に最安値7,054円を記録
- 1989年末の最高値から82%の下落を経験し、日本経済に深刻な影響を与える
- 株価回復には約4年かかり、2013年にリーマンショック前の水準を回復
- アベノミクスや金融緩和政策が株価上昇を後押しし、円安が輸出企業の収益を改善
- 世界市場との連動性が強まり、国内外の政策や経済動向が日本市場に大きく影響
リーマンショックで日経平均株価はどう動いた?
この章ではリーマンショックで日経平均株価はどう動いたかについて解説します。
リーマンショック発生時の日本経済と株式市場の状況
2008年、世界は未曾有の金融危機に見舞われ、日本経済も例外ではありませんでした。
当時、日本の株式市場は既に下落傾向にあり、投資家の間に不安が広がっていました。
リーマン・ブラザーズの破綻は、この不安を一気に現実のものとしたのです。
日本の金融機関は、直接的な影響は比較的小さかったものの、世界的な信用収縮の波を避けることはできませんでした。
企業の資金調達が困難になり、設備投資や雇用に影響が出始めていました。
日経平均株価の暴落と最安値の記録
リーマンショックの影響は、日経平均株価に如実に表れました。
2008年9月のリーマン・ブラザーズ破綻後、株価は急落の一途をたどったのです。
投資家のパニック売りが相次ぎ、市場は混乱の渦に巻き込まれました。
そして、2009年3月10日、日経平均株価は衝撃的な数字を記録します。
終値7,054円98銭、これはバブル崩壊後の最安値でした。
この数字は、多くの投資家の心に深い傷跡を残しました。
1989年末の最高値38,915円87銭と比較すると、実に82%もの下落です。
まさに、日本経済の「失われた20年」を象徴する出来事でした。
2008年~2009年の日経平均株価の推移データ
具体的な数字で見てみましょう。
2008年の日経平均株価の終値は8,859.56円でした。
そして2009年には、10,546.44円まで回復しています。
しかし、この数字だけでは実態が見えてきません。
年間の変動を見ると、2008年9月から2009年3月にかけて、株価は激しく乱高下しました。
例えば、2008年10月28日には、一時6,994.90円まで下落しています。
これは、日中の取引で記録された最安値です。
世界市場との連動性と日本市場への影響
リーマンショックは、世界の金融市場の連動性を如実に示しました。
日本の株式市場は、米国や欧州の動向に大きく影響されるようになったのです。
この連動性は、グローバル化が進んだ現代の金融市場の特徴を表しています。
投資家にとっては、リスク分散の難しさを示す一方で、世界経済の一体化を実感させる出来事でもありました。

株価回復までの期間とその要因を徹底解説
この章では株価回復までの期間とその要因について解説します。
日経平均株価が回復するまでにかかった時間
リーマンショック後、日経平均株価が最安値を記録したのは2009年3月で、7,054円まで下落しました。
その後、株価がリーマンショック前の水準(約14,000円)を回復するには約4年かかり、2013年にようやく達成されました。
この回復には複数の要因が絡んでいます。
まず、世界的な金融緩和政策が市場に流動性を供給し、投資環境を改善しました。
また、日本国内では企業のリストラやコスト削減を通じた利益率の向上が進みました。
さらに、アベノミクス政策が2012年末から始まり、円安誘導や金融緩和が株価上昇を後押し。
これらの要素が重なり、日経平均は徐々に回復基調に乗りました。
チャートでみるリーマンショック
データ提供元:TradingView
チャートからリーマンショックを振り返ってみましょう。
ここでは以下のように定義してチャート、データを見ていきます。
定義
- 2008.9/12:下落開始(9/15にリーマンブラザーズ破綻)
- 2009.3/10:底
- 2009.3/11:リーマンショック終了(ここから急上昇)
- 2013.6/8:回復(2008.9/12の株価を基準)
- 数値は終値
ポイント
- 下落率:-42.2%
- 下落幅:-5,159.78
- 下落期間の日数:179日
- リーマンショック終了までの日数:180日
- 回復までの日数:1,638日(約4年5カ月)
日経平均はリーマンショックが始まる前に既に下落基調に入っているので、天辺から計算するともっと下落率は悲惨なことになります。
既に情報をつかんでいる人は売ってしまっていたのでしょう。
どこを基準にするかは人それぞれなので、あくまでも参考程度にしておきましょう。
企業業績改善と株価回復の関係
リーマンショック後、日本企業は大規模な構造改革を実施しました。
特に、不採算事業の整理やコスト削減が進み、「三つの過剰」(過剰債務、過剰設備、過剰雇用)の解消が図られました。
さらに、輸出産業は円安の恩恵を受け、収益を拡大。
例えば、自動車や電子機器メーカーは海外市場での競争力を取り戻し、大幅な利益増加につながりました。
また、国内需要も徐々に回復し、不動産や建設業界も追い風となりました。
これらの業績改善が投資家心理を好転させ、日経平均株価の上昇に寄与したのです。
アベノミクスがもたらした株価上昇の具体的な効果
アベノミクスの「三本の矢」(金融緩和、財政出動、構造改革)は、日本経済と株式市場に大きな影響を与えました。
特に、日本銀行による大規模な量的緩和政策は、市場への資金供給を増やし、金利低下と円安を実現。
この結果、輸出企業の収益性が向上し、日経平均株価は2013年に22%上昇しました。
また、政府による公共投資拡大も内需拡大につながり、多くの産業で業績改善が見られました。
▼金利について詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
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金利変動と株価の関係:初心者投資家が知るべき利上げ・利下げの影響
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海外市場の影響と日本市場の立ち位置
日本市場はリーマンショック後も世界経済との連動性が強く見られました。
例えば、中国やアメリカなど主要貿易相手国の景気回復は、日本企業の輸出増加を支えました。
一方で、日本市場独自の要因として、新NISA制度などの国内投資促進策や東京証券取引所によるPBR(株価純資産倍率)改善要求も影響。
これらにより、日本市場は外国人投資家からも注目される存在となり、大量の資金流入が見られました。

リーマンショック後の日経平均を支えた金融政策とは
この章ではリーマンショック後の日経平均を支えた金融政策について解説します。
日本銀行の金融緩和政策とその役割
リーマンショック後、日本銀行は迅速に金融緩和政策を導入しました。
2008年10月には政策金利を引き下げ、実質的なゼロ金利政策を採用。
これにより、企業や個人が資金を借りやすくすることで、経済活動の停滞を防ぐ狙いがありました。
さらに2010年には「包括的な金融緩和政策」を発表し、長期国債やETF(上場投資信託)の買い入れを拡大。
この政策は、資産価格を引き上げることで市場心理を改善させる効果が期待されました。
2013年には「量的・質的金融緩和」が導入され、マネタリーベース(市場に供給される資金量)を増加させることで、物価上昇と経済成長を促進しました。
このような金融緩和策は、日経平均株価の回復において重要な役割を果たしました。
円安が日経平均株価に与えた影響
リーマンショック後、日本では円高が進行し、輸出企業の収益が圧迫されました。
しかし、2013年以降の異次元緩和政策により円安が進み、日本企業の競争力が回復。
例えば、自動車や電機メーカーなど輸出依存度の高い企業は、円安によって海外市場での価格競争力を高めることができました。
その結果、業績改善が進み、日経平均株価も上昇基調に転じたのです。
また、円安は外国人投資家にとって日本株の魅力を高める要因となりました。
為替差益も期待できるため、多くの海外資金が流入し、株価上昇を後押ししました。
量的緩和政策と株式市場への波及効果
量的緩和政策は、市場への資金供給量を増やすことで投資環境を改善する目的があります。
日本銀行は長期国債やETFなど多様な資産を購入することで、市場全体のリスクプレミアム(投資リスクに対する追加報酬)を低下させました。
この結果、投資家は低リスク資産から株式などのリスク性資産へとシフトし、株価が上昇したのです。
特にETF購入は直接的に日経平均株価の押し上げ要因となり、市場心理にも好影響を与えました。
政府の財政政策がもたらした市場心理改善
金融緩和だけでなく、政府による積極的な財政政策も重要な役割を果たしました。
例えば、大規模な公共事業や減税措置は内需拡大につながり、企業収益や雇用環境の改善に寄与しました。
また、「アベノミクス」の一環として実施された成長戦略は、中長期的な経済成長への期待感を高め、市場心理を大きく改善。
このような財政政策と金融緩和の組み合わせ(ポリシーミックス)は、日経平均株価の回復基調を支える基盤となりました。

投資家が学ぶべきリーマンショックの教訓
この章では投資家が学ぶべきリーマンショックの教訓について解説します。
リーマンショック時に投資家が直面した課題とは?
投資家がリーマンショック時に直面した最大の課題は、株価の急激な下落による心理的なパニックです。
株価は短期間で30%以上下落し、多くの投資家が損失を確定させる行動に走りました。
また、メディアによる悲観的な報道が市場心理をさらに悪化させ、冷静な判断を妨げました。
その結果、将来的な回復を見越した長期的視点を失い、資産運用を中断するケースが多く見られたのです。
さらに、暴落時に適切な情報や助言を得られないことで、売却か保有かの判断基準が曖昧になる問題も発生しました。
暴落時における適切な投資行動とは
暴落時には、以下の行動が適切とされています。
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様子を見る
株価暴落は一時的な現象であることが多いため、慌てて売却するよりも冷静に状況を見守ることが重要。
市場は歴史的に回復傾向があるため、長期的視点を持つことで損失を最小限に抑えることができる。 -
買い増しする
優良企業の株式が割安になるタイミングとして捉え、追加投資を検討することも有効。
ただし、財務状況や成長性を慎重に分析する必要がある。 -
売却する
損切りルールに基づき、回復の見込みが低い銘柄を売却する場合もある。
この際、事前に定めた投資方針に従うことが重要。
「売るべきか、保有すべきか」の判断基準
「売却か保有か」の判断には以下の基準が役立ちます。
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市場動向の確認
現在の市場環境や経済指標を分析し、一時的な下落なのか構造的な問題なのかを見極める。 -
リスク許容度の評価
自身のリスク許容度と財務状況を再確認し、保有継続による負担が許容範囲内かどうか判断する。 -
ポートフォリオ全体のバランス
分散投資によるリスク軽減効果を考慮し、単一銘柄への集中投資を避ける。
長期投資戦略がもたらす安定性
長期投資戦略は市場の短期的な変動に強く、以下のメリットがあります。
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複利効果による資産成長
時間とともに利益を再投資することで、複利効果を最大化できる。 -
精神的負担の軽減
短期的な市場変動に振り回されず、冷静な判断を維持できる。 -
インフレへの対応
長期的には成長性の高い資産への投資でインフレ率を上回るリターンが期待できる。
これらの戦略は初心者にも取り組みやすく、安定した資産形成につながります。

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まとめ
ポイント
- リーマンショックで日経平均株価は2009年3月に最安値7,054円を記録
- 1989年末の最高値から82%の下落を経験し、日本経済に深刻な影響を与える
- 株価回復には約4年かかり、2013年にリーマンショック前の水準を回復
- アベノミクスや金融緩和政策が株価上昇を後押しし、円安が輸出企業の収益を改善
- 世界市場との連動性が強まり、国内外の政策や経済動向が日本市場に大きく影響
今回はリーマンショックで急落した株価の回復期間と要因について説明してきました。
世界中を恐怖に巻き込んだリーマンショックは、下落率・回復期間ともにとんでもない数字だったことがわかります。
しかし株価は必ず上がってくるので、パニックにならず、冷静に状況を判断することが重要です。
そのためにも資金に余力を残す、分散投資をする、信用取引のルールを決めるなどをし、退場させられないトレードしていきましょう。


参考: