

株式投資を始めたばかりの方にとって、どの銘柄が割安なのか、どの指標を見れば良いのか迷うことが多いです。
そんな時に役立つのが「株式益回り」という指標です。

株式益回りは、企業がどれだけ効率よく利益を生み出しているかを株価との関係で示すもので、計算式は「1株あたり利益(EPS)÷株価×100」と非常にシンプルです。
PER(株価収益率)の逆数としても使われ、他の資産の利回りや債券利回りと比較しやすいのが特徴となります。
この指標が高い企業は、株価に対して利益水準が高く、割安株として注目されやすいです。
また、日本株の平均株式益回りは5~6%程度が目安とされており、業種によって大きく異なる傾向があります。
割安株を探す際には、株式益回りだけでなく、PERやPBR、ROEなど他の指標も組み合わせて活用することが重要です。
一時的な業績の変動や業種特性にも注意し、複数の観点から総合的に判断することで、より納得感のある投資判断につながります。

ポイント
- 株式益回りは、株価に対する企業の利益水準を示す指標である
- 計算式は「1株あたり利益(EPS)÷株価×100」で、PERの逆数となる
- 日本株の平均株式益回りは5~6%程度で、業種によって大きく異なる
- 割安株のスクリーニングや投資判断には、他の指標(PER、PBR、ROEなど)との併用が重要である
- 一時的な業績変動や業種特性に注意し、複数の観点から総合的に判断することが大切である
株式益回りとは?初心者にもわかりやすく解説
この章では株式益回りについて解説します。
株式益回りの基本的な意味
株式益回りは、株価に対して企業がどれだけ利益を生み出しているかを示す指標です。
具体的には「1株あたり利益(EPS)」を「株価」で割って求めます。
たとえば、EPSが100円で株価が2,000円なら株式益回りは5%です。
この数値が高いほど、投資したお金に対して企業が多くの利益を生み出していると判断できます。
英語では「Earnings Yield」と呼ばれ、世界中の投資家が割安株を探す際に活用しています。
株式益回りはPER(株価収益率)の逆数という特徴も持ち、PERが20倍なら益回りは5%。
預金の利息や債券利回りと比較しやすい点も、初心者にとって理解しやすいポイントです。
▼株価指標について知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
株式益回りが注目される理由
最近、株式益回りが投資家の間で注目を集めています。
その理由は、株価が割安かどうかを判断するシンプルな指標であるためです。
たとえば、株式益回りが高い企業は利益水準に対して株価が低く、割安と評価されやすくなります。
また、2025年現在、日本株の平均的な株式益回りは約6%前後で、国債利回り(約1%)と比べて非常に高い水準です。
この差は「イールドスプレッド」と呼ばれ、株式投資の魅力を測る目安になります。
さらに、配当として支払われない利益も、将来的な株価上昇や増配の原資になるため、配当利回りよりも実質的なリターンが高くなる場合もあります。
このように、株式益回りは投資判断の重要な材料として活用されているのです。
株式益回りと他の投資指標との関係
株式益回りは、PERや配当利回りと密接に関係しています。
PERは「株価÷1株あたり利益」で計算され、株式益回りはその逆数です。
たとえばPERが10倍なら、株式益回りは10%となります。
配当利回りは「1株あたり配当金÷株価」で算出され、実際に受け取れる配当の割合を示します。
一方、株式益回りは配当だけでなく、内部留保として企業に残る利益も含めて評価できる点が特徴です。
このため、配当利回りが低くても株式益回りが高い場合、将来の増配や株価上昇が期待できるケースもあります。
複数の指標を組み合わせて分析することで、より精度の高い投資判断につながります。

▼配当利回りについて詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
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配当利回りとは?株式投資で失敗しない高配当株の基礎知識と選び方【3%以上が目安】
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株式益回りの計算方法とPER・配当利回りとの違い
この章では株式益回りの計算方法とPER・配当利回りとの違いについて解説します。
株式益回りの計算式と具体例
株式益回りは「1株あたり利益(EPS)」を「株価」で割って算出します。
計算式は「株式益回り=EPS ÷ 株価 × 100(%)」です。
たとえば、ある企業のEPSが100円、株価が2,000円の場合、100÷2,000×100=5%となります。
英語では「Earnings Yield」と呼ばれ、米国市場でも広く使われています。
この指標が高いほど、株価に対して企業が多くの利益を生み出していることを意味します。
PER(株価収益率)の逆数としても活用できるため、PERが20倍なら株式益回りは5%になります。
実際の投資判断では、他の指標と合わせて使うことで割安株を見つけやすくなります。
PER(株価収益率)との違い
PERは「株価÷1株あたり利益(EPS)」で算出され、株価がその企業の利益の何倍かを示す指標です。
PERが低いほど割安、高いほど割高と評価される傾向があります。
一方、株式益回りはPERの逆数で、「EPS÷株価×100」で求めます。
たとえばPERが10倍なら、株式益回りは10%です。
PERは「何年で投資額を回収できるか」という目安になり、株式益回りは「投資額に対してどれだけ利益を生み出しているか」を示します。
両者は表裏一体の関係ですが、見方が異なるため投資判断の幅が広がるのです。
PERを使うときは業界平均と比較し、株式益回りは他の資産(債券など)との比較にも役立ちます。
配当利回りとの違い
配当利回りは「1株あたりの年間配当金÷株価×100」で計算します。
たとえば、年間配当金が100円、株価が2,000円なら、100÷2,000×100=5%です。
これは、株価に対してどれだけの配当収入が得られるかを示します。
株式益回りが「利益全体」に着目するのに対し、配当利回りは「実際に受け取れる配当金」に注目します。
企業によっては利益が多くても配当を少なくする場合があり、この場合は株式益回りが高く、配当利回りが低くなるのです。
逆に、利益の多くを配当に回す企業は、両者の数値が近くなります。
どちらも投資判断に役立ちますが、目的や投資スタイルによって使い分ける必要があります。
配当利回りと株式益回りの使い分け方
配当利回りは「安定した配当収入を重視する投資家」に向いています。
一方、株式益回りは「将来の増配や株価成長も視野に入れる人」におすすめです。
たとえば、株式益回りが高く配当利回りが低い企業は、利益の多くを内部留保に回している可能性があります。
この場合、今後の増配や事業拡大による株価上昇が期待できるかもしれません。
逆に、両者が近い場合は、利益の多くが配当に回されているため、安定した配当収入が見込めます。
投資目的やリスク許容度に応じて、両指標を組み合わせて活用することがポイントです。

株式益回りの目安と業種別の平均値
この章では株式益回りの目安と業種別の平均値について解説します。
株式益回りの一般的な目安
株式益回りは「1株あたり利益(EPS)÷株価」で算出され、投資家が株価の割安・割高を判断する際の重要な指標です。
2025年現在、日本株全体の株式益回りの中央値は約5.9%となっています。
これは、株価の水準や企業の利益水準によって変動しますが、一般的に5~6%程度が平均的な目安とされています。
PER(株価収益率)が20倍なら株式益回りは5%、10倍なら10%という計算になります。
この数値を長期国債の利回りなどと比較し、株式投資の妙味を判断することが多いです。
たとえば、国債利回りが1%で株式益回りが6%なら、株式の方がリターン面で有利と考えられます。
ただし、株式益回りが高すぎる場合は一時的な利益増や業績変動の影響もあるため、単純に割安と判断するのは注意が必要です。
業種別・市場別の平均株式益回り
業種によって株式益回りの平均値は大きく異なります。
2024年のデータによると、たとえば鉄鋼業は中央値で約9.9%、建設業は7.0%、卸売業は7.9%と比較的高い水準です。
一方、情報・通信業や医薬品などは4%前後と低めの傾向があります。
海運業や石油・石炭製品などは、業績の変動が激しいため年によって大きく数値が変わることも珍しくありません。
また、サービス業や小売業は5%前後が目安となることが多いです。
このように、同じ株式益回りでも業種ごとの平均値を知っておくことで、割安・割高の判断がより的確になります。
最新の業種別ランキングは証券会社のサイトや専門メディアで随時更新されていますので、投資判断の際は参考にしてください。
株式益回りが高い・低い場合の意味
株式益回りが高い場合、一般的には「株価が割安」と評価されやすいです。
たとえば、PERが10倍なら益回りは10%となり、投資額に対して企業が多くの利益を生み出していることを示します。
一方で、業績が一時的に好調なだけの場合や、将来の利益減少が見込まれている場合もあるため、必ずしも「お買い得」とは限りません。
逆に、株式益回りが低い場合は「株価が割高」と判断されることが多いですが、成長期待が高い企業や安定した収益を持つ企業では、低い益回りでも株価が高く評価されるケースもあります。
また、株式益回りと国債利回りを比較する「イールドスプレッド」も活用されており、株式益回りが国債利回りを大きく上回っている場合、株式投資のリスクプレミアムが高いと判断されることが多いです。
このように、株式益回りは単独で見るのではなく、業種平均や他の指標、金利環境と合わせて総合的に判断することが重要です。

株式益回りを使った割安株の見つけ方
この章では株式益回りを使った割安株の見つけ方について解説します。
割安株スクリーニングの基本手順
割安株を見つけるには、まずスクリーニングという作業が欠かせません。
スクリーニングとは、膨大な上場企業の中から条件に合う銘柄を絞り込む方法です。
たとえば、株式益回り(Earnings Yield)が5%以上、PER(株価収益率)が10倍以下、PBR(株価純資産倍率)が1倍以下など、具体的な数値を設定して検索します。
証券会社のスクリーニングツールを使えば、条件を入力するだけで該当する銘柄が一覧で表示されます。
スクリーニング後は、企業の業績や財務内容もチェックし、安定した利益を上げているか確認しましょう。
この手順を踏むことで、初心者でも効率よく割安株を探せるようになります。
▼株価指標について知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
株式益回りを活用した実践的な銘柄選定方法
株式益回りを使った銘柄選定では、まず「今期予想の益回り」を基準にするのが一般的です。
たとえば、益回りが高い企業は利益水準に対して株価が割安と判断できます。
ただし、益回りが極端に高い場合は一時的な利益や特別要因によるケースもあるため、過去数年の平均値や業績の安定性も確認しましょう。
また、配当利回りと比較し、益回りが高いのに配当利回りが低い場合は、将来的な増配余地があるかもしれません。
このように複数の視点から選定することで、割安かつ成長が期待できる銘柄を見つけやすくなります。
他の指標と組み合わせたスクリーニング例
株式益回りだけでなく、PER、PBR、ROE(自己資本利益率)、自己資本比率なども組み合わせると、より精度の高いスクリーニングが可能です。
たとえば、「益回り5%以上」「PER10倍以下」「PBR1倍以下」「ROE8%以上」「自己資本比率50%以上」など、複数条件を設定します。
このように条件を重ねることで、財務が健全で収益力も高い割安株に絞り込むことができます。
さらに、業種や市場を限定することで、自分の投資スタイルに合った銘柄を選びやすくなります。
▼ROEについて詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
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ROE(自己資本利益率)を初心者にもわかりやすく解説!計算方法・目安・注意点まとめ
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具体的な銘柄選定の事例紹介
実際のスクリーニング結果を例に挙げると、たとえば2025年春時点で「JFEホールディングス」は益回り30%超、配当利回り8%台と高水準を記録しています。
また、「川崎汽船」も益回りが80%を超え、配当利回りも6%台という特徴を持っています。
こうした企業は、利益水準に対して株価が割安で、今後の増配や株価上昇が期待できるケースです。
ただし、業績の変動や一時的な要因がないか、配当方針や財務状況も確認しておくと安心です。
このように、実際の数値や企業名をもとに選定することで、初心者でも具体的なイメージを持って割安株投資に取り組めます。

株式益回りを投資判断に活かすポイントと注意点
この章では株式益回りを投資判断に活かすポイントと注意点について解説します。
株式益回りを使う際のメリット・デメリット
株式益回りを使う最大のメリットは、株価が「割安」かどうかをシンプルに判断できる点です。
たとえば、株式益回りが高い企業は、現在の株価に対して利益を多く生み出していると考えられます。
この指標はPERの逆数なので、PERが20倍なら益回りは5%と計算でき、他の投資商品と比較しやすい特徴があります。
一方で、デメリットも存在します。
企業の利益は景気や業績によって大きく変動するため、一時的な要因で益回りが大きく上下することも珍しくありません。
また、業種によって平均値が異なるため、単純な数値比較だけで投資判断を下すと失敗するケースもあります。
このように、株式益回りは便利な指標ですが、単独で使うと見落としが生じるリスクもあるため注意が必要です。
株式益回りと金利・債券利回りとの比較
株式益回りは、しばしば国債などの債券利回りと比較されます。
たとえば、2025年4月時点で米国S&P500の株式益回りは約5%、米10年債利回りは約4%という水準になっています。
この差を「リスクプレミアム」と呼び、株式市場が債券よりもどれだけ魅力的かを測る指標となります。
リスクプレミアムが大きいときは株式投資の妙味が高いとされ、逆に債券利回りが株式益回りを上回る場合は株式市場に警戒感が強まる傾向です。
実際、過去にはリスクプレミアムがゼロやマイナスになると株価の調整局面に入るケースも見られました。
このように、株式益回りは金利環境や債券市場とセットでチェックすることで、より的確な投資判断につなげることができます。
株式益回りを活用する際の注意点
株式益回りを使う際は、いくつかの落とし穴にも注意が必要です。
まず、企業の業績が一時的に大きく変動すると、益回りも大きく動くため、安定的な利益があるかどうかを確認しましょう。
また、配当利回りや他のファンダメンタルズ指標と組み合わせて総合的に判断することが大切です。
たとえば、益回りが高いのに配当利回りが低い場合、将来の増配余地があるのか、あるいは利益の一時要因なのかを見極める必要があります。
さらに、業種ごとに平均益回りが異なるため、同業他社との比較も欠かせません。
このように、株式益回りは便利な指標ですが、単独で過信せず、複数の観点から分析することが成功のカギとなります。
▼配当利回りについて詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
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一時的な業績変動への対応方法
業績が一時的に大きく伸びたり落ち込んだりすると、株式益回りも大きく動きます。
たとえば、特別利益や一時的な減損損失が発生した場合、EPSが大きく変動し、益回りも極端な数値になることがあります。
こうしたケースでは、過去数年の平均利益や、将来の業績予想も参考にすることで、より安定した判断が可能です。
また、四半期ごとの業績推移や、会社の事業内容の変化にも目を配ることで、一時的な数値に惑わされにくくなります。
安定的な収益力があるかどうかを見極めることが、失敗を防ぐポイントです。
他のファンダメンタルズ指標との併用の重要性
株式益回りだけでなく、配当利回りや自己資本比率、売上高成長率など、他のファンダメンタルズ指標もあわせて確認しましょう。
たとえば、益回りが高い企業でも配当利回りが極端に低い場合、利益が内部留保に回っている可能性があります。
また、自己資本比率が低い企業は財務リスクが高く、安定的な利益成長が難しい場合もあります。
こうした複数の指標を組み合わせて分析することで、よりバランスの取れた投資判断ができるようになります。
初心者の方は、スクリーニングツールなどを活用し、さまざまな観点から企業を比較する習慣を身につけると良いでしょう。

まとめ
ポイント
- 株式益回りは、株価に対する企業の利益水準を示す指標である
- 計算式は「1株あたり利益(EPS)÷株価×100」で、PERの逆数となる
- 日本株の平均株式益回りは5~6%程度で、業種によって大きく異なる
- 割安株のスクリーニングや投資判断には、他の指標(PER、PBR、ROEなど)との併用が重要である
- 一時的な業績変動や業種特性に注意し、複数の観点から総合的に判断することが大切である
今回は株式益回りについて説明してきました。
株を購入するときに様々な判断材料となる指標がありますが、どれも万能なものではありません。
今見ている数値だけを信じるのではなく、過去の数値や現在の状況、他の指標も見て総合的に判断することが重要になってきます。
初心者はなかなか難しく感じると思いますが、少しずつ勉強していきましょう。


参考: