

本記事は2010年の導入から2025年の売却開始までを一次資料に基づいて時系列で整理します。
フロー/ストック/アナウンスの違いを切り分け、投資家が迷いにくい判断テンプレを提示します。
まず結論と読み方
今回の決定の性格
売却開始は初ですが、当面のペースは小刻みです。
“方針の見出し”は心理に効きますが、実フローの重さは限定的になりやすい点が特徴です。
短期の過剰反応と、中期の均衡回帰は分けて観察するとブレません。
この記事の使い方
- 速報が出たら、データ表に1行追記するだけで更新完了です。
- 列は発表日/ニュース当日の終値/翌営業日終値/変化率/年末終値で固定します。
- 判断は会見トーン・為替・海外市況の三点チェックで標準化します。


年表:政策の節目と市場の反応(要点)
2010年代|導入と拡充
2010/12にETF・J-REIT購入を導入しました。
目的はリスクプレミアム圧縮と市場安定化です。
2014〜2016にかけて枠や運用を拡充し、2016/07には年間購入額を大幅に増額しました。
2020年|パンデミック対応
2020/03には上限を拡大し、相場安定に資する弾力運用を実施しました。
ボラが高い局面では、アナウンスとフローの両面から安定化を図る設計が続きました。
2021/03/19|買付方針見直し(TOPIX一本化)
日経225・JPX400連動の購入を停止し、TOPIX連動に一本化しました。
指数寄与度の違いから、当日前後は日経平均が相対的に弱くなる動きが観察されました。
2024/03/19|新規買い入れ停止
マイナス金利解除と同時に新規のETF/J-REIT買い入れを停止しました。
翌営業日は外部環境の追い風もあり、上昇で反応しました。
2025/09/19|売却開始(段階的・小規模・柔軟運用)
初の売却開始が決定されました。
市場影響を最小化する方針の下、当面は小刻みなペースで進められます。


仕組みの要点:フロー/ストック/アナウンス
フロー効果(需給)
実際の売買ペースが需給を通じて短期価格に効く現象です。
ペースが大きいほど短期インパクトは強まりやすく、出来高や先物の需給とも相互作用します。
ストック効果(保有残高)
保有残高の存在が、リスクプレミアム圧縮やボラティリティ低下に寄与しうる効果です。
買い入れ停止後もストック効果は残存し、売却の量・速度設計で漸減します。
アナウンス効果(心理)
“方針見出し”が期待や不安を動かし、実弾以上に短期変動を誘発することがあります。
今回の「売却開始」はアナウンス効果が先行しやすい一方、フローが小さいため反動も生じやすい構図です。


投資家の実務テンプレ(三点チェック)
1) 会見トーン
開始時期/売却ペース/柔軟性の3語に注目します。
「極めて漸進・市場影響最小化・柔軟運用」の組合せなら、過度な悲観は後退しやすいです。
2) 為替
円の急伸(1日±1%)は外需寄与の大きい指数に逆風です。
会見がハト寄りで円高が一服なら、戻りを後押ししやすいです。
3) 海外市況
米株・米金利が落ち着けば、今回の“量が小さいQT”は吸収されやすいです。
逆に米金利上昇と円高進行が重なると、戻りは鈍化します。


データ箱:日経平均の当日終値/翌営業日終値/変化率/年末終値
発表日(ニュース) | 内容 | ニュース当日の終値 | 翌営業日終値 | 変化率 | その年の年末終値 |
---|---|---|---|---|---|
2010/11/05 | ETF/J-REIT購入の導入決定 | 9,625.99 | 9,732.92 | +1.11% | 10,228.92 |
2016/07/29 | 購入額の拡大を決定 | 16,569.27 | 16,635.77 | +0.40% | 19,114.37 |
2021/03/19 | 買付方針見直し(TOPIX一本化)決定 | 29,792.05 | 29,174.15 | -2.07% | 28,791.71 |
2024/03/19 | 新規買い入れ停止を決定 | 40,003.60 | 40,815.66 | +2.03% | 39,894.54 |
2025/09/19 | 売却開始を決定(当面は小刻み) | 45,045.81 | (確定後追記) | — | — |
※スマホなど画面が小さい場合は、表を左右にスクロールしてご覧ください。
※数値はすべて日経平均株価の終値(当日・翌営業日・年末)。年末は大納会終値。
※根拠:FRED(Nikkei 225 日次)/主要報道/Yahoo Finance(2025/09/19)。
まとめ
「売却開始」は歴史的節目だが、当面のフローは小さいため、“見出し>実弾”になりやすいです。
会見・為替・海外市況の三点チェックを固定化し、表に1行追記するだけで常に最新版を維持しましょう。
ポイント
- 売却開始は初、ただしペースは小刻みで実フローは限定的。
- フロー/ストック/アナウンスを分けて評価し、過度反応と反動を想定する。
- 判断は会見トーン・為替・海外市況の三点チェックで標準化。
- 本記事は追記方式で資産化(表に1行ずつ追加)。


\市場の反応をリアルタイムで追う準備を/
参考:
- 日本銀行:ETF/J-REIT購入・運用に関する公表資料(2010年〜)
- 日本銀行:2021年3月 施策点検・買付方針見直し(TOPIX一本化)
- 日本銀行:2024年3月 マイナス金利解除・新規買い入れ停止
- 日本銀行:2025年9月 売却開始の決定・売却方法(段階的・小規模・柔軟運用)
- 主要メディア(ロイター/日経/Bloomberg):当日・翌営業日の市況解説