PERとPBR、どっちを見れば割安かわかりますか?

後輩ちゃん

カブヤク
入口はこう覚えよう。PER=利益に対する価格、PBR=純資産(簿価)に対する価格。目的が違うんだ。
PERは「1株利益(EPS)に対して株価が何倍か」、PBRは「1株当たり純資産(BPS)に対して株価が何倍か」を表します。
収益力(フロー)を見るのがPER、蓄積された資本(ストック)を見るのがPBR。
同じ「割安/割高」でも、測っている土台が違う点が最大の違いです。
30秒で要点|定義・式・使いどころ
- PER=株価 ÷ EPS(1株利益)。利益の何倍で買われているか。
- PBR=株価 ÷ BPS(1株純資産)。簿価の何倍で買われているか。
- 使い分け:PER→稼ぐ力の比較、PBR→資本の厚み・解散価値の目安。業種/局面で重みが変わる。
基礎の確認|式と単位の落とし穴
式
- PER=株価 ÷ EPS(円)。例:株価500、EPS50 → PER=10倍。
- PBR=株価 ÷ BPS(円)。例:株価500、BPS250 → PBR=2倍。
単位・前提の注意
- PER・PBRともに「倍」で表記。EPS/BPSは1株あたりの金額(円)で合わせる。
- PERは赤字(EPSマイナス)だと機能しにくい。PBRは赤字でも算出可能。
比較は連結ベースでそろえましょう。
BPSは一般に「親会社株主持分 ÷ 期末発行株式数(自己株除く)」で算出。
EPS/BPSは基本/希薄化後のどちらかで統一します。
何を映すか|フロー指標のPER、ストック指標のPBR
PER(フロー:当期の稼ぐ力)
- 来期予想などフォワードEPSを使うと、景気循環の歪みをならせる。
- 高成長の銘柄はPERが高くなりがち。PEG(PER÷成長率)で補助評価も可。
PBR(ストック:蓄積資本と解散価値の目安)
- 1倍割れは「株価<簿価」。資産評価や収益性の改善余地に注目が集まりやすい。
- 内部創出の無形資産(ブランド・研究開発など)は簿価に反映されにくく、構造的にPBRが高めに出ることがある(会計方針差にも注意)。
業種と局面での使い分け|どちらを重視?
資産リッチ/循環色の強い業種
- 不動産・資源・金融などはPBRの示唆が大きい。解散価値や規制資本が意識されやすい。
- 金融はPBRに加えP/有形簿価(P/TBV)や自己資本規制(CET1等)も併読するのが実務の慣行。
成長企業/軽資産モデル
- ソフトウェア・プラットフォーム等はPERを重視。ただし赤字期は売上成長率やユニットエコノミクスも併読。
景気サイクルのピーク/ボトム
- ピーク益のPERは見かけ上割安、ボトム益は割高に見える。平準化(フォワード/平均EPS)で補正。
例題で比較|同じ株価でも評価は変わる
前提(単位:円)
- A社:株価600、EPS60、BPS200 → PER=10倍、PBR=3.0倍
- B社:株価600、EPS30、BPS400 → PER=20倍、PBR=1.5倍
読み取り
- A社は収益力は高い(PER低め)が、簿価に対しては割高(PBR高め)。
- B社は簿価に対しては割安(PBR低め)だが、利益水準は低く見える(PER高め)。
同じ株価でも、どこを基準に測るかで評価が変わるのがPERとPBRの違いです。
よくある勘違いベスト7|ここだけは外さない
- PERが低い=必ず割安ではない(景気ピーク益や一過性要因に注意)。
- PBR1倍割れ=必ず好材料ではない(資産の質・収益性の低さが原因の場合)。
- EPS/BPSの定義を合わせずに他社比較(連結・希薄化・計算基準をそろえる)。
- 赤字期のPERに固執(赤字はPERが機能しない。PBRや売上成長で補助)。
- 無形資産産業をPBRだけで断じる(BPSに載りにくい価値がある)。
- 単年だけで判断(時系列×同業比較で読む)。
- 会計基準差を無視(IFRS/US-GAAPで無形資産や再評価の扱いが異なる)。
実務チェックリスト|比較前の整地
1. データの出どころ
- EPS/BPSが会社予想かコンセンサスか、直近四半期を含むかを確認。
2. 希薄化の有無
- ストックオプションや新株予約権が多い場合は希薄化後株式数でEPS/BPSを確認。
3. 一時要因と会計方針
- 減損・特別利益/損失でEPSが歪んでいないか、会計方針(無形資産・再評価)を注記で確認。
関連と次の一歩|成長で補正する考え方
高成長でPERが高く見えるときは、PEG(PER÷成長率)で補助的に整える考え方もあります。
まとめ|PERとPBRを“並べて”見る
ポイント
- PER=利益倍率、PBR=簿価倍率。フロー(稼ぐ力)とストック(資本)で基準が違う。
- 業種/局面で重みが変わる。時系列×同業比較で評価。
- 赤字期はPERが効きにくい。PBRや売上成長、PEGなどで補助評価。
まずは同業3社でPERとPBRを並べてみます。

後輩ちゃん

カブヤク
いいね。データの前提(EPS/BPSの出どころと希薄化)だけは必ずそろえてね。
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