

キャッシュフローは「お金の動き」を表す情報です。
営業CF(Cash Flow from Operating activities)は本業で稼いだ現金、FCF(Free Cash Flow)はその中から将来の維持や成長に必要な設備投資を差し引いた「自由に使える現金」の目安です。
30秒で要点|定義・式・読み方
- 営業CF=本業の現金収支(売上入金−仕入・人件費等の支払+減価償却の非現金調整など)。
- FCF(基本形)=営業CF − 設備投資(CAPEX)。
- 読み方:営業CFが安定してプラス、かつFCFが継続的にプラスだと自走力が高い。
ひとことで言うと|「稼いだ現金」と「自由に使える現金」
営業CFは「日々の本業が生む現金」。
FCFはそこから維持・成長のための投資(CAPEX)を引いた残りで、配当・自社株買い・借入返済などに回せる余力の目安です。


計算式と見方|%ではなく「額」で追う
営業CFの中身
- 税引前利益に非現金費用(減価償却など)を足し戻し、運転資本の増減(売上債権・在庫・仕入債務)を調整したもの。
- 表示はキャッシュフロー計算書の「営業活動によるキャッシュフロー」。
FCFの基本形(初心者向け)
FCF=営業CF − 設備投資(CAPEX:有形・無形固定資産の取得)。
※投資CF全体ではなく、CAPEXに該当する取得分に限定して差し引くのが基本です。
FCFの別表現(参考)
FCF=NOPAT(税引後営業利益)+減価償却 − 運転資本増減 − CAPEX。
考え方は同じだが、まずは「営業CF−CAPEX」でOK。
注意点(定義差と表示方針)
- 資料やサイトでFCFの定義が異なることがある(投資CF全体を引く等)。比較するときは計算式を確認。
- IFRSでは利息の支払・受取の区分を企業が選択でき、営業/投資/財務CFのいずれかに入る。J-GAAPは原則として利息の支払・受取は営業CF(配当支払は財務CF)。表示方針の注記を確認して比較する。
例題で計算|数字でつかむ営業CF→FCFの流れ
前提(単位:億円)
- 税引前利益180、法人税等支払△50、減価償却+70、運転資本増減△80(売上債権・在庫が増えた)、CAPEX(設備投資)△90。
計算
- 営業CF=180 − 50 + 70 − 80 = 120。
- FCF=営業CF120 − CAPEX90 = 30。
読み取り
本業で120の現金を生み、そのうち90を投資に回して30残った。
配当や借入返済、自社株買いの原資になり得る。


見るべきポイント|継続性・投資の重さ・資本政策
継続性(時系列)
- 営業CFとFCFが数年単位で安定しているか。単発の売却益による一時的プラスに注意。
投資の重さ(CAPEX)
- 成長投資期はFCFが小さくなりやすい。投資後の収益拡大(売上総利益・営業利益)の見込みを併読。
資本政策との整合
- FCFが不足しているのに高配当・大型自社株買いが続く場合、借入や資産売却に依存していないか確認。
関連指標とつながり|“稼ぐ→投資→回収”の循環
ROICとFCFの関係
投じた資本からどれだけ効率よく利益・現金を生むかはROICで確認できます。
よくある勘違いベスト6|ここだけは外さない
- 営業CFがプラスなら必ず健全だと思う(運転資本の増減と継続性を確認)。
- FCFがマイナス=即NGと思う(成長投資期は一時的マイナスもある)。
- 投資CF全体をそのまま「CAPEX」と誤解する(投資有価証券の取得等は別物)。
- 減価償却を利益のまま評価してしまう(非現金費用はキャッシュではない)。
- 四半期の単発で判断する(通期/複数年で傾向を見る)。
- “FCF”の定義が資料で異なることを見落とす(FCFF/FCFE等)。本記事は入門の基本形「営業CF−CAPEX」で統一。
データの取り方|どこを見れば拾える?
キャッシュフロー計算書(CFS)
- 営業活動によるCF(営業CF)をそのまま使用。
- 投資活動の内訳から有形・無形固定資産の取得(CAPEX)を特定して差し引く。
IFRS/J-GAAPの表記差
- 科目名の日本語と英語(Property, plant and equipment / Intangible assets等)を対応させて確認。
- 利息の支払・受取の区分が異なる場合があるため、注記や会計方針を確認して比較する。
自作管理表の列(おすすめ)
- 「売上/営業利益/営業CF/減価償却/CAPEX/FCF/運転資本増減/注記」。四半期と通期を並べる。
ケーススタディ|パターンで見抜く
パターンA:営業CF↑・FCF↑
本業の稼ぎも投資後の残りも好調。配当や自社株買いの余地がある可能性。
パターンB:営業CF↑・FCF↓
投資を厚くしている成長局面。投資の回収可能性(KPI・需要)を重視。
パターンC:営業CF↓・FCF↓
本業の稼ぎが弱く、投資も重い。費用・価格・在庫管理の見直しや投資計画の再考が必要。
まとめ|今日から使う着眼点
ポイント
- 営業CF=本業の現金、FCF=営業CF−CAPEX。まずはこの基本形でOK。
- 継続性×投資の重さ×資本政策の3点セットで読む(単発で判断しない)。
- 定義差に注意。サイトや資料でFCFの式が違うと比較できない(表示方針の注記も確認)。


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