

利益率は「売上に対して利益がどれだけ残ったか」を示す割合です。まずは3つの位置づけを押さえましょう。
営業利益率=本業の稼ぐ力、経常利益率=本業+金融収支の影響、純利益率=最終的に残る利益です。
ここを押さえるだけで、決算の読み方がぐっと安定します。
30秒で要点|3つの違いと使い分けを一発で
- 営業利益率=営業利益÷売上高×100%(本業の強さ)。
- 経常利益率=経常利益÷売上高×100%(本業+利息・配当など金融収支)。
- 純利益率=親会社株主に帰属する当期純利益÷売上高×100%(税や一時的損益まで反映)。
まずは営業→経常→純利益の順に上から下へたどり、どこで目減りしているかを確認します。
ひとことで言うと|「売上100のうち何が残る?」を縦に追う
営業→経常→純利益になるほど、範囲が広く・外部要因の影響も増えると覚えましょう。
営業利益率は販管費(人件費・広告費など)の効き、経常利益率は利息・配当・為替差損益などの効き、純利益率は税や一時的な損益(固定資産売却益・減損など)まで含めた“着地”です。


計算式と見方|%の扱いまで迷わない
式(3つまとめ)
営業利益率=営業利益÷売上高×100%。
経常利益率=経常利益÷売上高×100%。
純利益率=(親会社株主に帰属する当期純利益)÷売上高×100%。
考え方(縦にたどる)
「売上を100とした時に何が残るか」を縦にたどるイメージです。
売上総利益→営業利益→経常利益→当期純利益と下るほど、費用や損益の反映範囲が広がります。
実務メモ(IFRSの注意)
IFRS適用企業では「経常利益」の区分が無いことがあります。
その場合は近い概念として税引前利益(profit before tax)や営業外損益の内訳で補って読みます。
純利益は連結では親会社株主に帰属する当期純利益が一般的です。
例題で計算|3つを並べて感覚をつかむ
前提データ
売上高1,000/売上総利益220/営業利益80/経常利益70/親会社株主に帰属する当期純利益50。
計算
- 営業利益率=80÷1,000×100=8%。
- 経常利益率=70÷1,000×100=7%。
- 純利益率=50÷1,000×100=5%。
読み取り
営業→経常で1%下がるのは、利息費用や為替差損など金融収支がマイナス寄与の可能性。
純利益でさらに下がるのは、税や一時的な損益(売却益・減損など)の影響が考えられます。


業種別の傾向|何%なら高い/低いの感覚をつくる
小売・外食(薄利多売)
- 営業利益率は一桁%台が一般的。原価と人件費・家賃の管理がカギ。
- 値上げ・PB比率・店舗構成で改善余地を探ります。
製造業(資本集約)
- 営業利益率は一桁後半〜10%台前半が目安のことが多い。
- 稼働率・歩留まり・原材料価格・在庫評価の影響に注意。
ソフトウェア/プラットフォーム(固定費レバレッジ)
- 営業利益率は10〜30%超もありうる。スケールで販管費率が下がる。
- 成長投資局面では広告宣伝費や研究開発費で一時的に低下することも。
金融収支が効きやすい業種
- 有利子負債が多い、または為替感応度が高い企業では経常利益率の差が出やすい。


粗利率・販管費率・利益率のつながり|どこで改善できる?
粗利率(売上総利益率)→営業利益率
粗利率が高いほど、販管費をカバーしやすく営業利益率が上がります。
価格改定・ミックス改善・原価低減が主なレバーです。
販管費率→営業利益率
人件費・広告費・物流費などの効率化で販管費率を下げると、営業利益率が改善します。
固定費の見直しやスケール効果も重要。
営業外収支→経常利益率
利息・配当・為替差損益などの金融要因で経常利益率が上下します。
財務体質や通貨エクスポージャーの管理も読み解きのポイントです。
税・一時的損益→純利益率
税率の変動や売却益・減損などの一時要因で純利益率が急変することがあります。
注記・開示で理由を必ず確認します。
データの取り方|どこを見れば数値が拾える?
決算短信・業績ハイライト
- 売上高・営業利益・経常利益・当期純利益は短信の連結損益計算書やサマリーに掲載。
- IFRS企業は「経常利益」が無いことがあるため、税引前利益(profit before tax)・金融収支の内訳を確認。
IR資料・説明会スライド
- 販管費の内訳(人件費・広告・物流)や一時要因の説明が載ることが多い。
自作の管理表(おすすめ列)
- 「銘柄/売上/営業利/経常利/純利/各利益率/粗利率/販管費率/注記」列で、四半期と通期を並べて管理。
読み方のステップ|3分でできる実務フロー
Step1:3つの利益率を算出
最新四半期と通期(予想でも可)で、営業・経常・純利益率を計算。
Step2:同業2社と比較
同業上位/競合と並べ、どの段階で差が出ているかを特定。
Step3:注記で理由を特定
粗利・販管費・金融収支・税・一時要因のどれが効いたかを注記で確認。
改善の仮説をメモ。
英語表記の早見|海外資料を読むときに迷わない
- 営業利益:Operating income(Operating profit) → 営業利益率:Operating margin
- 経常利益(J-GAAP):Ordinary income/IFRSでは区分なし → 近似:Profit before tax・Finance income/expensesで補足
- 親会社株主に帰属する当期純利益:Net income attributable to owners of parent → 純利益率:Net profit margin
ケーススタディ|数値パターンで読み分ける
パターンA:営業○/経常×/純利益△
営業利益率は高いのに経常で落ちる→有利子負債や為替差損が重い可能性。
財務コストの見直しを注視。
パターンB:営業△/経常○/純利益×
営業が弱く、経常で配当収入等に依存→本業の筋肉が不足。
一時益や金融収支に頼っていないか要確認。
パターンC:営業○/経常○/純利益×
最終段で急低下→税率上昇や減損・売却損など一時的な損益が疑われる
注記を読む。
目安と使い方|業界差・投資局面・一時要因に注意
業界差
- 小売・外食は低め、ソフトウェア/プラットフォームは高めになりがち。まずは業界平均を把握。
投資局面の見極め
- 成長投資で広告や研究開発費を先行投下すると、一時的に営業利益率が下がることがあります。文脈を読みます。
一時要因の切り分け
- 売却益・減損など一時的な損益がある場合は、基礎体力を見るときに除外して考えるのが無難。
よくある勘違いベスト3|ここだけは外さない
- 純利益率だけで本業の強さを判断してしまう(営業利益率を見る)。
- 一度きりの一時要因で長期の競争力を誤解する(注記で理由を確認)。
- 金融収支が大きい業種で営業利益率だけを見る(経常利益率や税引前利益率も確認)。
関連指標と次の一歩|“利益率→資本効率”へ
基礎に戻る
稼いだ利益をどれだけ効率よく資本で生み出しているかはROEで確認します。
まとめ|今日から使う着眼点
ポイント
- 営業=本業/経常=本業+金融/純利益=最終。式はいずれも利益÷売上×100%。
- 同業比較×時系列で読み、売却益・減損などの一時的な損益は切り分ける。
- 粗利率・販管費率→営業利益率→経常→純利益と、どこで目減りするかの「橋」を意識する。
- IFRS企業は経常利益が無い場合があるため、税引前利益(PBT)や営業外損益の内訳で補う。


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